心の欠片。【短編集】 (ページ8)

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幼い頃に遭った事故で下半身麻痺となり、それからもう10年ぐらい。

元々の性格上、それを伝えられた時もなぜか、悲しくなかった。

寧ろ、それに負けてたまるかと、自分の中のなにかに火が付いた。

その事故で、両親を失い。

双子の兄と俺だけ、“生き残ってしまった”。

今、兄が笑顔を見せないのは、俺のせいなのかもしれない。

俺が行きたいと言った、“博物館”に行かなければ。

今も4人、幸せに過ごしていたはずなのに。

引き取ってくれる親戚は居らず、施設に入所することになった。

けれど、俺は入院が長引き、しばらくはそこに行けず。

兄はひとり、孤独な生活を送っていたのだと思う。

優しい職員さんの声掛けにも、兄は素っ気なく返す。

優しさをどう受け止めれば良いのか、分からないのだと思う。

俺はその、クッションのような役割に、つけているのだろうか？

いつもは翔太に押してもらっているから、時間はかからない。

でも今日は、自分の手で帰る。

いつもは使わない力を使ったからか、部屋についた時には、目をゆっくり閉じた。

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