心の欠片。【短編集】 (ページ41)

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初めてのグループの単独コンサート。

本番の日のことだったかな。

コンサートで全員でバク転をすると決め、それのリハーサルをしていた時のこと。

左側が見えない俺は、いつもある程度の距離を保ってバク転をすると、心掛けている。

その時は、その意識が薄れてしまっていたのかもしれない。

バク転の着地が左側に大きくズレてしまって、左隣にいた翔太に、当たってしまった。

翔太も俺もバランスを崩してしまい、翔太は左手を抑えたまま動けていなかった。

俺は自責の念に駆られ、「ごめんなさい」と何度も翔太に言った。

翔太は急遽病院に、俺は少し擦りむいただけで、大事には至らなかった。

本番間近ということもあって、現場は慌ただしくなり。

他のメンバーの声も、スタッフさんやマネージャーさんの声も。

まるで聴こえなかった。

本番ギリギリで戻ってきた翔太は、左手に包帯が巻かれていて。

謝ろうと近づくと少し遠くで、『俺は大丈夫だから』と口パクで言ってくれた。

本番中俺はきっと、笑えていなかっただろうな。

それに、全員でのバク転の予定もなくなった。

俺のせいで。

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