心の欠片。【短編集】 (ページ4)

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その阿部ちゃんの言葉に俺は、何も返せなかった。

何て返していいのか分からなくて、彼を否定するようなことを言ってしまいそうで。

肯定も、もちろん、否定もできなくて。

腕に刺さった点滴は、いつものなのだろうか？

「いつも以上に点滴してもらってるの、明日のために」

『…そうなんだ、』

「自分の都合なんて、関係ないもんね。自分のせい、」

阿部ちゃんは笑った。

“自分のせい”という言葉に首を横に振ると、阿部ちゃんも首を横に振る。

「ありがとう、こんな俺を肯定してくれて」

そんな阿部ちゃんの目線は、ノートに向けられている。

少し乱れた呼吸を整えると、これ、と手渡された。

「ごめんね、途中で起きていられなくて。所々抜けてるけど」

『ううん、ありがとう。メンバーにも見せるね？』

「ううん、」

「本当は分かってるよ、出られないって。これが、最後の抵抗ってやつなのかな」

『…そんなこと、』

「出たかったな～、コンサート。せっかくのグループ単独だったのに」

阿部ちゃんは笑って、そう言った。

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