心の欠片。【短編集】 (ページ23)

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左半身の麻痺が強く出ていて、誰かの支え無しには歩くことはできない。

そんな不自由な体じゃ、アイドルなんてもってのほか。

一時退院と聞いた時も、治療が順調だと聞いた時も、早ければ年内には退院できると聞いた時も。

この後の未来を想像したら、笑えなかった。

ただでさえ、メンバーには迷惑ばかりかけて。

今回だって面会謝絶を出して、デビュー直後にも関わらず、活動休止。

せっかく掴んだ夢、自ら手放したといっても過言でもない。

一時退院が決まり、久しぶりにメンバーに連絡をした。

シンメである佐久間に、2ヶ月振りぐらいに。

恐る恐る送ったメッセージ。

既読してくれるか、返信をしてくれるか、メンバーのはずなのに、緊張して。

そんな俺にも佐久間は、一時退院の日に、わざわざ病院に迎えに来てくれた。

忘れかけていた、満面の笑みで迎えてくれた。

その時俺は笑えていたのかな。

『コンサート、観に来ない？』

「…俺なんかが、いいの？」

『何言ってんの。阿部ちゃんがいないと、成立しないもん！』

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