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声をかけても反応がなかったこと、の理由が分かった。
病院の職員さんから話を聞き、彼が抱えていること、ものの大きさを知った。
いろいろな思いがあって、今回の行動に至ったのだろう。
今まで彼がどんな経験、体験をしてきたかは分からないが、今彼に寄り添うこと。
さっきまで名前を知らなかったし、年齢とか、詳しいことは何も知らない。
でもなぜか、彼と話をしたかった。
なにか後悔しそうで、自分の中の何かが、そう言っていた。
そのひとつは、
“兄も難聴者である”ということ、だろう。
俯く彼の耳には、緑色に光るものがあった。
緑色が好きなのだろうか、なにか会話をしてみたくて、手話で伝えてみた。
『“緑色が好きなんですか？”』
「“…はい、”」
阿部さんは、驚いたような表情を見せていた。
首を傾げ、ほんのり笑った。
彼は笑顔が素敵で、
「“手話、分かるんですか？”」
『“兄がそうなので、拙いですが”』
「“そうなんですか！”」
明るい人だ、ということ。
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作者名：はるけいとつ | 作成日時：2023年2月23日 20時
