異なる二人の初心者レッスン ページ6
「…私が、ロボロの台詞を読めばいい？」
「おん、せやな。…はぁー……ｯし、始めんで」
結局レッスン室を借りられた私と彼は、軽く発声をした後、一年の頃の最終公演の台本片手に、位置についた。
台詞は覚えていれども、私たちがやらなければならないのは、己が演じた役とは反対の性別の役だ。
台本を持っていなければ落ち着かず、私も彼も何時もよりも落ち着かない様子で、そこに立っていた。
すぅ、と小さな息を吸い込む音の後、彼は口を開き、台本に印刷されている男役の台詞を口に出した。
それに続き、私も女役の台詞をふっと宙にのせる。
ぽんぽんと案外軽快に続いていく台詞だったが、私の表情も彼の表情も依然として固いままだった。
ふと、台詞の途中で彼の声は止まり、レッスン室を突如として沈黙が包み込む。
私と彼とは何方ともなく顔を見合わせ、同じような仕草で台本を握りしめた。
これは、駄目だ。
自分の体の奥底から、拒否反応が漏れ出しているのがよくわかった。
「…駄目やな、こんなん」
「……うん、一年の初舞台よりも酷いね」
「…あー……クソ、」
私と彼との演技はよく言って演技初心者、悪く言うならば素人の一人稽古のような酷い出来だった。
口先から滑らかに飛び出していかなければならない筈の言葉は、喉奥で幾度もつっかえ、
まるで咳でもするみたいに淡々と感情すらうまく乗らないで、宙に溢れていってしまう。
もちろん最初から上手くやれるなんて、そんな甘い話があるとは思っていなかったが、ここまで酷いと流石に威勢を失うのも当然と言ったところだ。
私も彼も黙ったまま、無情にも変化すらしないでただそこに印刷されているだけの台詞をぼうっと読み耽った。
私は、どう女役を演じてみればいいのだろう。
女の台詞からはなんの感情さえ読み取れない。
彼女がどう笑っているのかすら今の私にはわからなかった。
「…男役、難しいなぁ」
「ロボロ」
「…Aはいっつもこんなんやっとったんか、…凄い、ヤツやなぁ」
「…ロボロこそ、あんな軽やかにステップ踏んで、女役演じるでしょ、……私に、それはできないよ」
男と女、正反対の性の役を演じるには、声の広げ方からステップの踏み方まで、あらゆる部分が違っている。
掠れた声でそんな羨望の言葉を呟いたロボロに、私も愚痴めいた独り言をこぼしてやることしかできなかった。
あの女役の才能を持った彼が、心底羨ましかった。
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ゆるぽろう - 了解でございます！！私生活が忙しいのですか、無理はなさらず頑張ってくださいませ…！ネル様が生存していた(？)ということが確認できたので本当に良かったです、例え不定期でも全裸待機します！！体調にはお気をつけて！！！ (2022年8月3日 20時) (
レス) @page42 id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ネルさんの作品、特にこのシリーズとっても好きなのでいつまでも更新待ってます！私生活も占ツクの更新も無理しないでくださいね！ (2022年7月30日 0時) (レス) @page42 id: 7aebf15c07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 本当にお前おこがましすぎるし殴るぞと思われるかもしれませんが、他作品の更新もないので少しと言うかめちゃくちゃ心配でございます。もしも戻って来られましたら泣くので、ずっとここでペンラ振って全裸待機してます。長文失礼いたしました。好きです！！！ (2022年7月27日 22時) (レス) id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 前作や前々作を読み返したり、この作品も最初から見たりしてますが、やはり寂しいですな(何様じゃボケ)私生活がお忙しいようでしたら仕方ありませんし、私一読者がこんなことを言うのなんておこがましいですが、またネル様の物語を読みたいなと日々思っております。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page40 id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ネル(プロフ) - ゆるぽろうさん» 把握ありがとうございます、、！！ 解釈不一致に日々呻いております、、笑 納得のいく作品になったら恐らく筆ものるはず、、。 …私も好きです笑 (2022年5月24日 16時) (レス) id: 3cff5be0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネル
| 作成日時：2022年5月17日 19時
