異なる二人のこれきり ページ37
朧げな記憶の彼方に、その台詞の端くれが覗いている。
彼が覚えているということは、勿論当時の私はそんな言葉を言ったのだろうが、あまり覚えていないと言うのが真剣な感想だった。
未だ年若い未熟な精神の持ち主であった私は、自分に才能があるとそう信じてやまなかったのだ。
だから、そんな無責任な言葉を言って彼の手を引いてやったに過ぎない。
しかし、私の些細な言葉で彼が救われていたなら、それで良かったとそう思えた。
当の私はといえば、今から彼のパートナーであるヒロインを降ろされる身だと言うにも関わらず、
彼の晴れやかな笑みを見つめていれば、現実を全て忘れてしまうような心地だった。
私は、随分と単純な奴であるようだった。
「…俺、それからやねん、ヒロインがすっと馴染むようになったん」
「そ、っかぁ」
「……俺のパートナーは、Aしか居らんねんで」
蚊の鳴くような声でそう言った後、苦しそうに息を吐き出した彼に、何も言えなかった。
自分の力量不足であるから役を降ろされると言うのに、今更何をすればいい。
何も言わない私に何かを察したのであろうか、
彼も何も言わないままで顔を上げると、その萩色の目を揺らし、私の手のひらを細い指先で掴み取って歩き出した。
ずんずんと何時もよりかは大股で廊下を進んでいく彼の背に声をかけたとて、返ってくる返事はなく、私は戸惑いながらも彼の後を追うしかなかった。
黙ったまま彼に引きづられて行くこと数分、私と彼とが着いたのは第一レッスン室だった。
一年生の頃もここで仁井先生に舞踏を見てもらっていたか、不意に懐かしくなり、思わず目元が緩む____が、彼がここに来た理由がわからず、私はそのまま立ち尽くしていた。
「ロボロ、何する気？私先生に呼ばれてるから早く行かなきゃいけないのに、」
「……どうせ何で呼ばれたかなんか分かっとんのやろ、…ちょっとくらいええやん、踊ろう」
「えぇ、……でも」
「…これが、最後になるかもしれへんで。…にーさんせんせ、俺に男役推しとるし」
「うん、…うん」
「な、ええやろ」
レッスン室の踏み慣れた床に上履きの擦れる音が耳に滑り込み、どうしようもなく身体の底が湧いた。
振り向き様に格好を付けて手を差し出した彼の手を取ってみせ、小さく微笑むと私はただの制服を着たままで、彼と共に大広間のダンスホールへと足を、進めてしまった。
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ゆるぽろう - 了解でございます！！私生活が忙しいのですか、無理はなさらず頑張ってくださいませ…！ネル様が生存していた(？)ということが確認できたので本当に良かったです、例え不定期でも全裸待機します！！体調にはお気をつけて！！！ (2022年8月3日 20時) (
レス) @page42 id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ネルさんの作品、特にこのシリーズとっても好きなのでいつまでも更新待ってます！私生活も占ツクの更新も無理しないでくださいね！ (2022年7月30日 0時) (レス) @page42 id: 7aebf15c07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 本当にお前おこがましすぎるし殴るぞと思われるかもしれませんが、他作品の更新もないので少しと言うかめちゃくちゃ心配でございます。もしも戻って来られましたら泣くので、ずっとここでペンラ振って全裸待機してます。長文失礼いたしました。好きです！！！ (2022年7月27日 22時) (レス) id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 前作や前々作を読み返したり、この作品も最初から見たりしてますが、やはり寂しいですな(何様じゃボケ)私生活がお忙しいようでしたら仕方ありませんし、私一読者がこんなことを言うのなんておこがましいですが、またネル様の物語を読みたいなと日々思っております。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page40 id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ネル(プロフ) - ゆるぽろうさん» 把握ありがとうございます、、！！ 解釈不一致に日々呻いております、、笑 納得のいく作品になったら恐らく筆ものるはず、、。 …私も好きです笑 (2022年5月24日 16時) (レス) id: 3cff5be0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネル
| 作成日時：2022年5月17日 19時
