異なる二人の精神崩壊 ページ35
翌日も、そのまた翌日も、私の中にはヒーローの影が散らつくばかりで、
まともにヒロインを演じられないのを教師陣は悟ったらしい。
未だ希望を持っていたのは演技指導の先生らしく、なんとか役交代の段取りを進めようとしている他の教師陣を押し留める様を、よくレッスン室で見かけるようになった。
だが、当の私はというと日に日に自分の中から靄となって消えていくヒロインを演じるのに限界を感じているのが本音であり、役交代の案については賛成寄りの姿勢を取らざるを得なかった。
勿論、彼のパートナーを誰かと交代するのは過去の自分と彼との関係性を鑑みれば、悔しいなんて感情も浮かんでくるのも事実であるが、それ以上に私は自分の限界と精神状態の崩壊が目の前に迫ってきている事をはっきりと感じていた。
自分の目の先に揺れているのが、本当に彼の影であるのか、それとも自分が作り出した彼の影の幻であるのかすら、私にはわからない。
チェネレントラを演じなくてはいけない、その言葉が脳を日に日に圧迫し、思考回路を断ち切っていくようだった。
彼への謝罪の言葉すら考えるのもままならず、彼との関係が改善することもなく、ただ本番の日が無常身も迫ってくるのを、私はぼろぼろの身体で待つしかなかった。
▽▽▽
「あぁ、A！」
「………」
「…なぁ、大丈夫なん？最近えらい顔色悪い日が続いとるし、…その、練習も身ぃ入っとらんみたいやし、」
「…あ、うん…多分大丈夫。役は降ろされるかもしれないけど」
「大丈夫やないやん」
本番まで残り一ヶ月を切った五月初週のことだった。
役交代の事を知らせるつもりなのだろう教師陣に、放課後の職員室まで呼ばれた私は、ぼうっと渡り廊下を歩いていた。
梅雨が始まる訳でもなかろうに、妙に続く雨の日に憂鬱な気分を加速しながら、コンクリートを上履きで叩いていた、そんな時間に私は久々に彼と会話を交わしたのだ。
最初は影でなく遂には幻覚まで見えるようになったか、とそろそろ病院の受診を考え始めそうな思考に至ったが、妙に通る声色はどうにも幻覚の産物であるとは思えない。
小さく答えてみたところ、呆れたように眉を下げて私の額を細い指先で擦った彼に、これが現実である事を私は認識したのだった。
「…私、先生に呼ばれてて、…多分役交代の事だと思うの、だって私全然演じられないし、最近は舞踏だって上手く回れないし、それに、」
「…なぁ、ちょっと聞いて」
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ゆるぽろう - 了解でございます！！私生活が忙しいのですか、無理はなさらず頑張ってくださいませ…！ネル様が生存していた(？)ということが確認できたので本当に良かったです、例え不定期でも全裸待機します！！体調にはお気をつけて！！！ (2022年8月3日 20時) (
レス) @page42 id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ネルさんの作品、特にこのシリーズとっても好きなのでいつまでも更新待ってます！私生活も占ツクの更新も無理しないでくださいね！ (2022年7月30日 0時) (レス) @page42 id: 7aebf15c07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 本当にお前おこがましすぎるし殴るぞと思われるかもしれませんが、他作品の更新もないので少しと言うかめちゃくちゃ心配でございます。もしも戻って来られましたら泣くので、ずっとここでペンラ振って全裸待機してます。長文失礼いたしました。好きです！！！ (2022年7月27日 22時) (レス) id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 前作や前々作を読み返したり、この作品も最初から見たりしてますが、やはり寂しいですな(何様じゃボケ)私生活がお忙しいようでしたら仕方ありませんし、私一読者がこんなことを言うのなんておこがましいですが、またネル様の物語を読みたいなと日々思っております。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page40 id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ネル(プロフ) - ゆるぽろうさん» 把握ありがとうございます、、！！ 解釈不一致に日々呻いております、、笑 納得のいく作品になったら恐らく筆ものるはず、、。 …私も好きです笑 (2022年5月24日 16時) (レス) id: 3cff5be0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネル
| 作成日時：2022年5月17日 19時
