異なる二人の来訪者 ページ28
「…なんだかなぁ」
「ん、そこのシーン納得いかないんや」
「んー……まぁ、ねぇ」
幾日か過ぎたとて、私はチェネレントラの一番の見どころであるそのシーンが何故であるか、納得がいかなかった。
王道な恋愛喜劇、この演目の軸が分かっていれども、チェネレントラについて回る現実的な作風から、このシーンだけ切り取られている様に夢心地なのが気に掛かる。
別に不満があるわけではないはずなのだが___胸の奥に引っかかるささくれの様なものが、このシーンの活字にはあるように感じられていた。
すっかり男役に慣れたらしい、自主練でもその演技をこれでもかと見せつけてくれる彼にとっては、大して気になる様なシーンでもないらしいのだが、
私の言葉にできない気味の悪い疑問に自主練の休憩時間中は付き合ってくれている。
二人して腕組みなんてしながら、ぼうっと空中を見つめるが、特に何処がおかしいのかなんてわかるはずもなく、また困った表情で困った声を上げる他なかった。
「…チェネレントラは、運命を信じてたのかな」
「……ほーかもしれへんな。ラミーロもチェネレントラを運命の人っていっとるし、」
「だとしたら、結構意地悪なこと言うんだね」
腕輪と数回聞いたきりの声を頼りに私を探して。
運命の糸で結ばれてるなら、きっと貴方にも見つけられるでしょ。
もちろん台本上で軽やかに踊るチェネレントラは、そんな意地悪で期待させるような複雑な言葉なんて言わないで、ただ純粋にラミーロ王子を信じて単純な言葉を言うだけの娘だ。
だが、私は彼女の言葉の裏に、何か秘めたる真意があるのではないかと妙に勘繰ってしまっていた。
彼は私の呟いた言葉に何も返さず、ただぼうっと視線を上げたまま、その萩色の目を疲れたように瞬きさせるのみだった。
少しばかりやつれたような光をたえるその双眸に、彼が何かを隠していたことが思い当たる。
過ぎゆく忙しない日々の中に、この疑問は頭の片隅で忘れるか否かを引っかかっているばかりであったが、
思い出して仕舞えば、真実を知りたくなってしまうのが性と言うものだろう。
彼に向けて小さく口を開き、真実への一歩を踏み出してしまう____その刹那のことだった。
唐突にレッスン室の扉が開き、
私と彼の視線は反射的に突然の来訪者の方へ向かう。
そしてその人物を視界に捉え、私たちはあっと小さく声を上げた。
「…よ、練習中にごめんなぁ。桃井に話があってん」
「兄さん、せんせ」
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ゆるぽろう - 了解でございます！！私生活が忙しいのですか、無理はなさらず頑張ってくださいませ…！ネル様が生存していた(？)ということが確認できたので本当に良かったです、例え不定期でも全裸待機します！！体調にはお気をつけて！！！ (2022年8月3日 20時) (
レス) @page42 id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - ネルさんの作品、特にこのシリーズとっても好きなのでいつまでも更新待ってます！私生活も占ツクの更新も無理しないでくださいね！ (2022年7月30日 0時) (レス) @page42 id: 7aebf15c07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 本当にお前おこがましすぎるし殴るぞと思われるかもしれませんが、他作品の更新もないので少しと言うかめちゃくちゃ心配でございます。もしも戻って来られましたら泣くので、ずっとここでペンラ振って全裸待機してます。長文失礼いたしました。好きです！！！ (2022年7月27日 22時) (レス) id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - 前作や前々作を読み返したり、この作品も最初から見たりしてますが、やはり寂しいですな(何様じゃボケ)私生活がお忙しいようでしたら仕方ありませんし、私一読者がこんなことを言うのなんておこがましいですが、またネル様の物語を読みたいなと日々思っております。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page40 id: 98cc6c3041 (このIDを非表示/違反報告)
ネル(プロフ) - ゆるぽろうさん» 把握ありがとうございます、、！！ 解釈不一致に日々呻いております、、笑 納得のいく作品になったら恐らく筆ものるはず、、。 …私も好きです笑 (2022年5月24日 16時) (レス) id: 3cff5be0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネル
| 作成日時：2022年5月17日 19時
