ほんとうは。【音駒】

さんじゅうさん ページ34

あなたにとっての幸せってなんですか？

　






カウンセラーの先生にそう聞かれたけど、結局なにも答えられなかったのを思い出した

てか、それを不登校の生徒に普通聞くだろうか。






心の中では、そんなの知るわけがないと先生に怒鳴り散らしていた。

表っ面では、しおらしくただ苦笑を浮かべていたような気がする。









　









苦しげに眉間に寄せられた皺は、母の顔に浮かぶ苦痛の色をいっそう濃くさせた

それはどうやら、他も同じようで。





なぜそんな表情をしているのかが読み取れない私は、当惑するしかなかった。





お通夜よりも重たく感じる空気
不安などで頭が破裂しそうだった。








　







「なにか、勘違いしているようだけど。…確かに、あんたに思うことはたくさんあるけど、責めているわけじゃない。」



苦悶の顔で首をふる
組んでいた手のひらを開いたり、結んだり。

反応は様々で。



遠くから、車のクラクションが聞こえる
再び訪れる静けさ






「私も、貴方にたくさんの負担をかけてしまった事を、…後悔しているの」




母に一番似ている私は、父親に嫌われていた
あからさまな態度の違いに、どんなに幼くても何となく察してしまうほど。


理性ができて、意思を持つようになった頃には、父の関心は私になかった




そうして今まで、しがみついて甘えてきたせいでお母さんを傷つけるだけでなく、家族まで傷つけてしまった





　
今でも消えない罪悪感を抱えているのは、私だけではなく母も姉達も一緒で。

私以外のだれかが、口を開いた









　







「……………高校合格、おめでとう。A」







微笑んだ母さんの目には、沢山の涙が浮かんでいた。

どんな言葉をかければいいのかわからず、開いたくからは何も出る事なく閉ざされる



しかし、何度も謝ろうとして勇気が足らず、ただ情けない嗚咽を含んだ声を出さぬように掌で口を覆う
自分達を照らす電気の光が眩しく感じた。








　


『っ、ごめんな､さい。…私が、もっとちゃんと、しておけば、こっ、んな迷惑を、かけることなんかなかっ、たのに。』




光によって浮き彫りにされる、母の顔の骨格
最後に顔をちゃんと見たのはいつだったか。




こんなにも痩せていなかったはずなのに







複雑そうに私と母を交互にみる姉達
困ったような顔に、泣きそうな顔と反応は様々だった。

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