ほんとうは。【音駒】

さんじゅういち ページ32

『きょう、集まってくれてありがとう。…ございます。』





　





　





なんだこれ。
何かの会議でもしてるのか、これは。



他人事のように、自分の発した言葉をなぞって、突っ込む







家族とこうして話すのは、久々だった。


そのせいか話し方や、接し方がわからなくなっていて









『……。』






余分に息を吸っては、二酸化炭素をはきだすのを繰り返す。

言いたいこと、謝りたいこと、たくさんことが頭で混雑を起こしていて、話したいことが、まとまらない。






どうしたものかと、頭を抱えたくなる。









自分に向けられる視線に泣きたくなってきた

逃げたい。








　









　








　









　









「…ねぇ、明日も仕事だから、早くしてくれない？」







ぐさり、言われて当然の言葉が深く深く心に刺さる

あぁ、容赦ないなほんと。





辛いと叫ぶ声をごまかすために、笑いを混ぜる。






目尻から垂れそうになる涙を、出ぬように目を細めた



そうだ、みんな私と違って忙しいんだ。

早くしないと。






頭をグルグルする原因は、外に出れる場所を探して脳内を荒らす

車酔いをした時のような気持ち悪さが、襲いかかった来る









　






『…ごめんな「急かすのはやめなさい。どうせ、明日は家出るの遅いんでしょ？」』






「でも、」



「いいから、黙ってなさい。」





ぴしゃり。


母が口を開いたかと思えば、姉を制する言葉だった。

不満げな目を向けてくる姉から、咄嗟に顔を逸らす




ただただ、母は口を閉ざし、私がしゃべるのを待ってくれていた。









酔いは完全にはなくならないものの、少しづつ、ぼやけた思考回路がはっきりとしていくのがわかった。








口の中で、小さく、ありがとうと呟いた

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