ほんとうは。【音駒】

にじゅういち ページ21

※灰羽視点









夜久さんの鬼のようなレシーブ練が続き、ようやく一段落が付き休憩の許可をもらった



深井にスポドリを頼もうと、おろしていた重たい腰を上げて声をかける





「なぁー、深井…」






体育館の端の方で、佇んでいるあいつは何処かに視線を向けていて
目が合わない。






いつもは明るく振舞い、にこやかにしてるのに
焦点の合っていないうつろな目をしていた。


珍しい





























　






　










あいつの幼少期のころの話は聞いたことがない

そういう話になると、深井は話の輪に入ってはいるが、話そうとする様子はない気がした



話を振ってみたりしても、曖昧な返答しか返ってこない。






その時は別に、違和感があったわけではないし、俺も特に意識はしていなかった
気にもならない、







小学校の頃のちょっとした、黒歴史は聞いたことがあった

本人でさえ、楽しそうに笑ってて。




だから、気づかなかった






俺も。みんなも

あいつが、つらそうなのを






俺は正直、人の相談に乗れるほど頼りがいがあるわけではない。

寧ろその逆。



周りには相談できる良い先輩ばかりで。


でも、深井はあまり人に頼ろうとしない。
その心情はわからない



困った様子ですら、見せなかった









おれは、深井が苦しそうにしていても何もできないかもしれない。

だから、何もしない




もしも、勝手な行動でさらに傷つけてしまったら。なんて考えて

思いとどまってしまう俺の勝手なエゴ。






結局、他人の不幸を知らないふりをする、ただの弱虫。













　


ごめんな。









　









　









　









　









　








　









　









　




　









　









　









　




　

　





『灰羽』

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