ある子猫のお話 (ページ13)

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十三夜ページ13

「宴だあ！！」

「俺たちの新しい妹に、乾杯！！」

　ワイワイ、ガヤガヤと、甲板中に人が溢れかえり、それぞれ楽しそうに過ごしている。みんなが
飲んでいる酒っていうやつ。あれ、美味しそうだよね。

「ほらほら、ちゃんと食わねえと、将来立派な
　レディになれないぜ？」

　サッチは、両手に持った皿から骨付き肉を取り出し、私に渡そうとしてくる。

「も、もう、さっき食べたばっかだから無理………
　……サッチの言ってるレディって、ああいう人
　たちのこと？」

　私は、オヤジの隣で点滴を付け替えている女の人を見た。胸が大きいし、足も長い。短いスカートにヒョウ柄のニーハイソックスという、なんともセクシーな格好だ。

「あー、ナースたちか……お前はああなるんじゃね
　えぞ。なんてったってあいつらはな……」

　そこまで言いかけたその瞬間、サッチの肩に爪の整えられた手が置かれた。

「私たちがどうかしましたか？サッチ隊長♡」

「ゲッ……！！あ、いや、なんも言ってませーん」

　青い顔をして答えるサッチ。それもそのはずだろう。そこには、よく分からない液体を持った女
性たちが立っていたのだから。

「ち、因みに、それはどういった液体なんだ？」

「やだあ、サッチ隊長ったら、そんなびくびくし
　ちゃって………

　ただの硫酸じゃない♡」

　その時のサッチの顔はきっと、死ぬまで忘れることはないだろうなあ。顔だけで言葉が分かるってこういうことなんだなあとも思った。

『いいか！？お前はこうなるなよ！？』
　って言ってるみたいだったな……

「サッチ隊長………ちょっと、その子お借りします
　わよ♡」

「お、おいおい、まだ他の隊長たちに合わせ」

「あ"？」

「どうぞ連れていって下さい！」

　どうやら、サッチはこの御姉様方には頭が上がらないらしい。そういえば、この船ではナースが医者の代わりをしてるって聞いたことが………

「じゃ、行きましょうか、子猫ちゃん♡」

「もう～ナース長っ！それじゃナンパみたいじゃ
　ないですか！」

「ナンパしてるの♡」

　なんというか………見ていると楽しくなってくるな、このナースの御姉様たち。

　と、ボーッとしていると、ナース長と呼ばれていた御姉様と目が合った。

「あら、自己紹介がまだだったわね……
　私ジャンティよ♡この船では一応ナース長を務
　めているの♡」

　「よろしく～」と言われ、反射的に私も礼を返した。怖い人ではない……のかな。