九夜 ページ9
その瞬間、またもやマルコ隊長とティーチさんの動きが止まった。もちろん、俺も。
「お、やっぱりその顔の方がいいな。
女の子なんだからもっとそうやってくれていい
んだぜ？」
作業を終えたらしいサッチ隊長が食堂に戻って
きた。
_____え、どういう顔……？
元の無表情……いや、少し困惑した彼女は、おそらくそんなことを考えながら、自分の顔をペタペタと触っていた。
「んー……違う違う。そういうんじゃなくてな………
まあ、後々分かるだろ」
サッチ隊長。そんな雑でいいのでしょうか。と
ツッコミたくなったが、このメンツでそれをやると間違いなく滑る気がしたため、やめておいた。
「……今度は鏡でも用意しときましょうか」
「ついでに、映像電伝虫も頼むよい」
「あ、じゃあ俺はカメラ買ってくる」
俺がそう言った直後、マルコ隊長とサッチ隊長がこんなことを言ってきたからだ。
一瞬、「あれ、この人たちまさかロリコン…？」
という考えが頭をよぎったが、すぐに違うことに
気づいた。
この人たち、娘か姪っ子を可愛がってる気分で
この子に接している………のか？
「ゼハハハハ！！面白くなってきたァ！！」
ティーチさんは何故かずっと笑いっぱなしだしな………
「さ、サッチ……あの……」
「ん？……ああ、あの話な。じゃ、オヤジんとこに
行くか」
あの話？保護したっていう報告か……いや、それ
は既に他の船員が済ませているはずだ。じゃあ、
いったいなんなんだろう。
「おい、サッチ。話ってなんだよい」
俺の疑問を、マルコ隊長が代わりに聞いてくれたようだった。なんかちょっと嬉しいな。
サッチ隊長はその子と食堂の入り口まで行くと、こちらに振り返り、口を開いた。
「あー、言ってなかったな。
こいつ、俺たちの妹になるかもしれねえから、
オヤジに会わせてくるんだよ」
へえ、妹………………ん？？
「………え、ちょま」
「じゃな！」
バタン！と軽めの音を響かせて、扉は閉まった。食堂に取り残された俺たちは、口を半開きにしたまま、二人が出ていった扉を眺めていた。
「………おい、新人」
「……はい、なんでしょうか」
"新人" それは、俺のこの船での愛称だ。が、
普段、マルコ隊長は俺のことを名前で呼ぶ。
「宴の、準備しろい……」
「……了解です」
どうやら、よっぽど混乱しているらしい。
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作者名：シヲリ | 作成日時：2019年6月19日 22時
