ある子猫のお話 (ページ27)

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二十七夜ページ27

まぶたの上からまばゆい光を感じ、無意識に眉間に力を入れる。目を開き、それが太陽の光だということに気づいた。

　私は、洞窟の入り口で仰向けの体制で寝転がっていた。

　___頭が痛い。ボーッとする。

「……なんでだっけ……」

　___思い出せない……？いや、少しだけ………

　"____絶対に、手順を間違えないで"

「………なんの……手順……」

　ああ、また意識が遠退いていく。サッチたちは心配してくれているのだろうか。それとも私のことなんか忘れてくれているだろうか。

　どちらにせよ、このまま、まぶたを閉じてしまえば、あそこには帰れない。そう本能が訴えている気がした。

　唯一動かせる右腕を見る。服は所々破けており、指先まで血に染まっていた。

「わ、たし……なんで、こんなにボロボロ……ッ」

　いし……き…が………_________

「____おい！！見つかったかっ！！！？」

　まるで白鯨のごとく巨大な船が、無人島で留まっていた。その船の真ん前で、男たちの声が飛び交う。

　そのなかの一人が首を横に振る。コックタイをした男が、ボサボサな髪を更にかきむしった。それを見て、女形の和装をした男が話しかける。

「サッチ、そうカッカするんじゃねえ」

「てめえ……チェンのことが心配じゃあねえのかよ
　……！！」

「そうは言ってねえだろうが、少し落ち着けって
　言ってんだよ」

　見えるはずのものも、頭が苛立っていれば見えなくなる、とも。

　最初に異変に気づいたのは、コックタイの男、サッチだった。ある女の子の姿が見えないのだ。

　___いつもなら、誰よりも早く起きて俺を起こしに来るはず……

　嫌な予感がして、船員全員の点呼を取った結果。チェンと名付けられた少女が、モビーディック号から姿を消していた。

「……ッとにかく、もう一度森の中を探すぞ！！」

　サッチが声をあげる。僅かにだが、声が震えている。

「……まあ、待て。サッチ」

　モビーディックの船長室から、重圧のある声が聞こえてきた。船長、エドワード･ニューゲートだ。