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「昼ご飯、どうする？」
「あー、ヨーグルトあるよ？」
「え、そんだけ？」
「夜に沢山作ったげるから、昼はこれで我慢して？ね？」
冷蔵庫から出したヨーグルトを彼の前に置くと、彼は早速それを開ける。
志麻。お昼ご飯がヨーグルトだけなわけないじゃん。さっき、食べたんだよ？親子丼。
夜に沢山作ったげる、なんて嘘。そしたら食べ過ぎになっちゃうよ。
でも、いいよね。だって、こんな嘘だって忘れちゃうでしょ？
心の中ではそんなことを思いながら、気付かない彼に笑顔を向ける。
「…あ、うらたさんからメールや。
え、集まり今日やったん！？ごめん、すぐ家出るわ」
「そうなの？財布持った？」
「持った！」
「スマホ持った？」
「持った！」
「はい、いってらっしゃい」
「おう！」
認知症だとわかってから、出かける前に必ずする確認。
自分では確認することもままならないだろうから、と本人から頼まれたこと。
元気に返事をする彼を送り出そうと玄関に行くと、彼は動きを止めていた。
下を向いていて、表情がわからない。
「…志麻？」
「…A」
近付くと、ぐっと腰を引き寄せられ、ぎゅうときつく抱き締められる。
「いつも、ありがとうな」
彼は、静かにそう言った。
その瞳は不安そうに揺れていて、目元はほんの少し赤い。
「凄く、助かっとる。迷惑かけてごめんな。
ほんまにありがとう」
震える囁き声。優しくも悲観的な笑顔。
その顔を見ていられなくなって、私は彼の唇に自分の唇を重ねた。
小さな水音と共に唇が離れると、するりと彼が私を抱き締める力を抜く。
「いってらっしゃい。好きだよ、志麻」
「いってきます。俺もやで、A」
ばたん、と扉が閉まり、先程まで触れていた彼の姿が見えなくなった。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2019年10月8日 11時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
とあわ - 控えめに言って最高 (2019年5月18日 23時) (レス) id: b018cf85ec (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - Tileさん» 感動していただけたなら何よりです！こちらこそ、コメントありがとうございます！ (2019年5月6日 16時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
Tile(プロフ) - ガチ泣きしました……すごく面白かったです！！めちゃめちゃ感動でした。感動するお話大好きです！ありがとうごさまいました！ (2019年5月6日 12時) (レス) id: 3d55051bee (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» そんなに泣いていただけるとは…！こちらこそありがとうございます。目は擦ったら後に響きますので、優しく涙を拭き取って下さいね、コメントありがとうございました！ (2019年5月5日 3時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽飛 | 作成日時：2019年3月9日 12時
