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「…俺がいつまでも居ったら、Aはずっと俺に囚われてまう。お前がどんなに俺を愛してくれても、俺はお前を愛せなくなってまうのに。
Aがどれだけ優しい子かは、俺が一番知っとるからな。俺が生きとったら、お前は前に進めない。
な？わかるやろ？」
「志麻を捨てて他の男を探せとでも言いたいの？」
「聡い子やわ。おん。Aはもっといい人生を歩め」
「私の人生は私が決めるから」
幼子にいい子いい子をするように私の頭を撫でながら言う彼の言葉を遮る。
言い合いは、いつまでも平行線だった。が。
「なら俺の人生は俺が決める」
自分の言葉を上手く利用されてしまえば、あっという間に言い返す言葉に詰まってしまう。
とうとう私は、本当に子供のように嫌々と自分の感情を押し付けるしかなかった。
「…嫌だ。やだよ、志麻が居ないなんていや…」
「…それ、は」
「志麻が私のこと忘れるのも嫌だけど、それよりも志麻が死んじゃう方が嫌…！一緒に生きられないなら私も一緒に、」
「阿呆か！ふざけんな！
俺だって嫌やわ！Aだって、他の事だって忘れたくない！死になくなんてない！ずっとAと一緒に居りたい！
でも、無理やんか！俺は忘れてまう！
俺はAを忘れて生きるなんて嫌やねん！そんなの死んだも同然や！絶対に、嫌！！
…俺が、嫌やねん」
声を荒げて、嫌だ嫌だと言い合う私達。
交わらない。
互いに、望むことが噛み合っていないそれはあまりにも虚しい。
…ああ、綺麗な瞳。
彼の顔を見て、そう思った。
彼は何を思ったのだろう。彼の顔が段々と近付いてきて、私からも寄せていく。
唇が重なった。
お互いの存在を確かめ合うように。
ゆっくりと、相手の体温を感じながら。
荒い息を見てみぬふりをして、もっとゆっくりと、深く、深く。
脳内にそれの音が響いて、頭がどろどろに溶かされる。
随分と長い間そうした後、ゆっくりと唇を離す。
互いの濡れた唇は銀色に艶かしく光る糸に繋がれた。
「…好き」
「私は大好き」
「じゃあ俺は愛してる」
こんな状況で、付き合いたてのカップルのような他愛のない会話…でも気持ちを伝えるというとても大事な会話を交した。
「…ごめん、A。
部屋に戻ろう」
「…うん」
彼が折れてくれた、そう思ってほっとしながら階段を下りようとした。
その時。
真っ赤な景色が、私の視界を埋めた。
私は自分の愚かさを痛い程痛感したのだ。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2019年10月8日 11時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
とあわ - 控えめに言って最高 (2019年5月18日 23時) (レス) id: b018cf85ec (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - Tileさん» 感動していただけたなら何よりです！こちらこそ、コメントありがとうございます！ (2019年5月6日 16時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
Tile(プロフ) - ガチ泣きしました……すごく面白かったです！！めちゃめちゃ感動でした。感動するお話大好きです！ありがとうごさまいました！ (2019年5月6日 12時) (レス) id: 3d55051bee (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 関西風しらすぅ@坂田家さん» そんなに泣いていただけるとは…！こちらこそありがとうございます。目は擦ったら後に響きますので、優しく涙を拭き取って下さいね、コメントありがとうございました！ (2019年5月5日 3時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羽飛 | 作成日時：2019年3月9日 12時
