共通ルート21 気を付けて ページ22
最終日。
荷物を纏めて集合するのだが。
「あ、先輩。おはようございます」
「ヒラ君、おはよう」
まるでいつもの部活の始めのように、集合場所にはヒラ君と私だけがいた。
集合時間の10分前なので、まぁ無理もなくはない、のだが。
私よりも早く来ていたヒラ君がベンチに座っていたので、となりに座っていい？と尋ねると、彼はにこりと微笑みどうぞと答えた。
癒やされる。その一言に尽きる。
そんなことを思いながら隣に腰を下ろした。
「やっぱり先輩は早めに来ましたね。
そう思って俺も早めに来といて正解でした」
ヒラ君が、私の顔を覗き込みながら言う。
「え、もしかして私を待ってたの？」
「はい。誰にも邪魔されずに、二人きりで話をしたくて」
彼が私の髪を耳にかけ、顕になった耳に口を近付ける。
耳に触れる吐息がくすぐったくて、軽く身をよじると、それを許すまいと彼は髪をかけたのとは逆の手で私の腕を掴んだ。
小柄に見える彼の意外にも大きく力強い手に、息をのむ。
腕を掴んだ手はすす、と下り、次は手首をゆっくりと優しく握られる。
「キヨに握られた手首。
随分仲良くなったんですね。
それと、こーすけと間接キスした唇。
甘い物あんまり好きじゃなくて普段オレンジジュースなんて飲まないこーすけがオレンジジュースを飲んでるんだもん。笑っちゃった」
私の髪をかけた後毛先を弄んでいたヒラ君の指が、私の唇をつつ、となぞる。
ぞくりとした。
薄く笑う彼に。
もしかしたらキヨや部長がヒラ君にあれらの事を話しただけかもしれない。
けれど、いきなりこんなことを言われたら。
こんな顔をされたら。
何故知っているのか。そう驚いてしまうではないか。
目を見開いて動けなくなっている私の首筋に、ヒラ君は薄ら笑いを浮かべたまま頭をもたれかける。
「先輩。前、フジには気を付けて下さいねって俺言いましたよね。前言撤回です。
全員に気を付けて下さいね？
勿論俺にも。約束して下さい」
「う、ん…気を付ける、よ」
彼が上げた顔。
それは、とても不安に満ちていて。本気で、私を心配しているように見えた。いや、きっと、そうなのだろう。
これは彼の優しさ。でも時折垣間見える深く暗い瞳が彼の心をも影らせている、そんな気がした。
「お、ラーヒー早いじゃん」
「いやキヨ達が遅いんだよ！」
ヒラ君が私から離れ、今しがたやって来たキヨ達に、花舞う笑顔を向けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るよ - 羽飛さん» 返信遅れました…すいません、 リジェネかけてくださるんですか!w ありがとうございます笑＿(ニヨニヨにツボってました。 (2019年5月22日 21時) (
レス) id: bba6c5cf8b (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - るよさん» 死なないようにずっとリジェネかけます！wコメントありがとうございます、では私はニヨニヨしながら書きますね！← (2019年5月5日 15時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
るよ - ヤバいですね…。この話が好きすぎて死にそうです。(※ほめてます)作者さんのペースでいいので更新頑張って下さい!にやにやしながら待ってます笑 (2019年5月5日 13時) (レス) id: bba6c5cf8b (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 猫山さん» フジですぅー！フジはお色気担当として！甘々にしたいなぁと考えておりますので！頑張ります！コメントありがとうございました！ (2019年4月13日 18時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
猫山(プロフ) - フジルート来たァー！！推しですもう好きです。もちろんキヨルートもバッチリ見てきました！これからの更新楽しみにしてまっす！ (2019年4月13日 7時) (レス) id: b1e365017e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：羽飛 | 作成日時：2019年1月23日 18時
