志麻ルート9 ページ49
「へ、っ」
次の瞬間、志麻さんに背を向けるように横になっていた為がら空きの背中に、ぎゅっと抱きつかれる。
「し、しまさ、何して、」
「俺約束って言いましたやん。俺以外にそんな姿…肌を晒すなって」
「…はい」
更にぎゅう、と彼の腕に力がこもる。
彼は顔を私の首元に埋めて続けた。
「…凄く、怖かった。
もしもお嬢の身に、お嬢のその綺麗な身体に、傷が付いてしまったら。その純粋な心に、深い傷が付いてしまったら…俺は、俺は…
自分を自分で、許せなくなる。
本当に、心臓が破裂しそうなくらいに、怖かった」
彼の熱い息が項にかかり、くすぐったさと共に甘い感覚が体中に広がる。
私を抱くこの手の力が、震えが、そして苦しそうなその声が。表情がわからなくても彼が本気で私を心配してくれたこと、怖かったことを伝えてくれる。
「…ごめんなさい」
「無事で、本当に、良かった…」
優しい声。私を何度も助けてくれた、志麻さんの声、そひて温もり。これらに包まれて、私の身体は安堵しきっていた。
が、ほう、と息をついた瞬間、肩をぐいと思い切り引っ張られる。
「…でも、俺こうも言いましたよね。破ったらお説教ですよって」
視界に映ったのは、天井。そして私をじっと見下ろす志麻さん。
その瞳に宿る熱が私を煽った。
「あ、の、」
「もう二度とあんなことにならないように…お説教、というよりはお仕置き、ですかね」
志麻さんの綺麗な顔が、私の視界に広がっていく。
いずれ鼻先と鼻先が触れ合う距離に、吐息が交わる距離に、と間近まで顔が近付き、
息を呑んだ瞬間、唇が重なった。
きっと一瞬だっただろう。
けれど、それは私にとっては長く感じた。
名残惜しい、と言うかのように微かな水音を残しながら、唇が遠ざかる。
「…すみません、このことは忘れ、」
「忘れません。絶対」
私から離れようとする志麻さんの手を掴む。
物憂げな彼の瞳が、驚きによって揺れた。
不安そうに、私を覗き込んでいる。
私も、素直に怖かったと言ってくれた志麻さんに素直になりたかった。
だから、聞いて?
そんな思いを込めて手を強く握る。
「私も、とっても、怖かったんです。
でも、信じてました。
志麻さんが助けに来てくれるって、信じてました。
…まだ言えてませんでしたよね、
助けて下さって、ありがとうございました」
志麻さんの大きな手が、私の頭を撫でた。
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雨上がりのcrew(プロフ) - お体に気を付けて更新頑張ってください−!! (2019年8月6日 18時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 彩葉さん» センラーさんにそう言っていただけて、嬉しい限りです!応援に応えられるよう頑張ります、コメントありがとうございました! (2019年5月1日 13時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
彩葉 - 私の推しセンラさんなんですけど、センラ先生最俺にも出ててマジで好きです!引退されるのはとても寂しいですが、最後まで応援させていただきます! (2019年5月1日 12時) (レス) id: ca54fe217e (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 浪音さん» 大変おまたせしました!今の所は引退を考えていますが、寂しいと言っていただけるととても嬉しくも思います。ゆっくりにはなりますが、これからも読んでいただけるならば、頑張って更新します!コメントありがとうございました! (2019年4月11日 17時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
浪音 - 羽飛さんこれ完結したら引退しちゃうんですか...( ´-`)どうでも良い話ですが防音シェアハウスにて暴走中の時から応援してたので少し寂しいです。残りの更新頑張ってください!!応援してます!!! (2019年3月28日 20時) (レス) id: a925fc985a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2019年1月23日 17時