うらたルート9 取引 ページ31
「気付きました?」
目を開けると、目の前にはセンラ先生がいた。
頭が、ぐわんぐわんして気持ち悪い。
それでも無理矢理に身体を起こし周りを見て、ここが保健室であることを確認する。
「私、どうして保健室で寝てるんですか…?」
「覚えてへんの?
…ほら、うらたん。俺は席外すから説明したり」
先生が後ろを向く。その先にはうらた君がいた。
先生に頷き返し、うらた君が私の近くに寄る。
「…俺が、屋上に引き篭もって、その後にお前、
足を滑らせて階段から落ちちゃって…」
足を滑らせて階段から落ちた…?
ズキリ、と頭が痛む。
…あぁ、そっか。私落ちちゃったんだ。
「…ごめん。助けてやれなくて」
うらた君が、私の手をぎゅっと握る。
私もそっとその手を握り返した。
すると、彼は目を見開き、少し顔を赤らめる。
…可愛い。
つい、くすりと笑ってしまう。
「んーん。私の方こそ、心配かけてごめん」
「あのな…俺、怖かったんだ。
Aがあいつに取られるって思って。…女なんてどうせすぐに男乗り換えるんだ…て、また偏見でお前を見て、しかも、本当に付き合って無いのに。俺…」
うらた君が、私の首筋に頭を埋めた。
彼の暑い息が、私の体温を上昇させる。
「俺、お前の、こと、」
「はいそこまで」
うらた君が何かを言いかけた時、ぱんと乾いた音が鳴る。
センラ先生が手を叩いたのだ。
思わず二人してそちらを見てギョッとする。
だって、先生の後ろには。
「また会いましたね、先輩」
「情報屋…!?」
触角をふよふよとさせ、ほわほわとした柔らかい笑顔で微笑む、情報屋が立っていたのだから。
「取引、しましょう…?」
その日の夜。
私、うらた君、志麻さん、センラ先生、そして情報屋の五人で集まった。
これから行われるのは情報の取引。
ごくり、と生唾を飲み込む私とうらた君。
そんな私達を他所に、彼らは話を進めていく。
情報屋は坂田君と同じクラスで、どうやら今まで坂田君に協力していたらしい。今日の私との接触もその一貫で、私の周りを一般人であり手を出せないうらた君にうろつかれると困るから引き剥がしたかった、だそう。
そして今日、これまで本人の間近で集めてきた坂田君の情報を私達に売りに来た、ということ。
誰もがそう思ったが、彼の提案は真逆だった。
「貴方達の情報を、坂田君に売らせてください」
志麻さんとセンラ先生が、ニヤリと笑った。
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雨上がりのcrew(プロフ) - お体に気を付けて更新頑張ってください−!! (2019年8月6日 18時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 彩葉さん» センラーさんにそう言っていただけて、嬉しい限りです!応援に応えられるよう頑張ります、コメントありがとうございました! (2019年5月1日 13時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
彩葉 - 私の推しセンラさんなんですけど、センラ先生最俺にも出ててマジで好きです!引退されるのはとても寂しいですが、最後まで応援させていただきます! (2019年5月1日 12時) (レス) id: ca54fe217e (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 浪音さん» 大変おまたせしました!今の所は引退を考えていますが、寂しいと言っていただけるととても嬉しくも思います。ゆっくりにはなりますが、これからも読んでいただけるならば、頑張って更新します!コメントありがとうございました! (2019年4月11日 17時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
浪音 - 羽飛さんこれ完結したら引退しちゃうんですか...( ´-`)どうでも良い話ですが防音シェアハウスにて暴走中の時から応援してたので少し寂しいです。残りの更新頑張ってください!!応援してます!!! (2019年3月28日 20時) (レス) id: a925fc985a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽飛 | 作成日時:2019年1月23日 17時