乙女ゲームの世界に入ってしまいました【浦島坂田船】

うらたルート5　恋人 ページ27

友達。

意見が真反対で言い争いになっているこんな時でも、彼のその言葉に嬉しく思ってしまう。
私は、彼の友達になれたんだ、と。



「お嬢。必ずうらたさんの身の安全は保証します。センラさんにも話は通しておきますし。
先程は俺も反対的な口調でしたが、お嬢を一番に考えるのであればこれが最善です。
俺は、うらたさんのご厚意に甘えたいと思います」


「…頼む。隣に居させてくれ」



二人の真剣な目に、私はもう何も言えなかった。
ゆっくりと頷く。



「…わかりました。絶対に、うらた君を守ってくださいね。

うらた君。ありがとう」



ココアの波が、少しずつ鳴りを潜めていった。

うらた君との偽りの交際について三人で作戦を練った後、雨が上がってからうらた君を見送った。



翌日の朝。



「おはよう、A」


「…おはよう、うらた君」



家を出ると、目の前にうらた君がいた。

後ろでは志麻さんがこれまた恨めしそうな顔でうらた君を見ている。

何はともあれ、わざわざここまで来てくれている彼に一つ謝り学校へ向かって歩き出した。



「そうそう、次の週末空いてる？」


「うん、空いてるよ」


「っし、じゃあ土曜に買い物行こうぜ。
お揃いのキーホルダーなりネックレスなり、恋人感あるの欲しいだろ？」



そうノリノリで話してくれていることが救いだった。強制している訳ではないと、わかるから。
これも、彼の優しさなのかもしれない。



「…うらさん？」


「よう、坂田。おはよう」


「坂田君。おはよう」



訝しげな目で、私達をまじまじと見る坂田君。
嘘をついていることに心を痛めながら彼に笑いかけた。

暫し無言で私達を眺めた後、坂田君はニヤリと笑う。それはまるで、悪戯をする子供のように。



「へーえ？朝から二人で登校とか、らぶらぶやーん！このこのー！」


「何だよさかちん、寂しいの？構ってあげよっか？」


「そんな事言って、本当に構ってほしいんはうらさんやろ？」



今日も今日とて、平和的に会話が進む。
その事に安堵し、胸を撫で下ろすと、坂田君が
あっ！と叫んだ。



「今日日直やから早よ行かんとあかんのやった！
じゃ俺先に行っとるねー！ごゆっくりー」



坂田君は嵐のように学校へ走っていく。
明るい彼を見ていると、とても五十嵐組の人間とは思いない。そんな風に思う自分がまた嫌で、私はぶんぶんと頭を横に振った。

そして、二人で再び歩き出す。

うらた君に差し伸べられた、手を握って。

うらたルート6　情報屋→←うらたルート4　友達

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す