検索窓
今日:29 hit、昨日:2 hit、合計:137,639 hit

共通ルート19 坂田君 ページ20

「…何それ。普通は『いつもの坂田君に戻って』とかやないの?」


「残念だけど、私は君のいつもを知らないから。
確かに、『後輩の坂田君』で居てくれたら嬉しいけど、それが無理をしている貴方なら、そうでなくていい。

本当の貴方が『五十嵐組の坂田君』だったら、私はそれでもいい。私は、」



言いながら、気付く。

坂田君の奥に、選択肢が表示されていた。


〖坂田君を否定する〗

〖坂田君を肯定する〗



「私は、『坂田君』を肯定する」



真っ直ぐに、紅蓮に濁る彼の瞳を見つめて言った。

彼は、乾いた笑いを漏らす。



「ははっ、何やそれ。僕を、肯定…?」



僅かに、私の両手を握る手が震える。
彼が何かを言おうとしたその時。



「何、やってんだよ。坂田」


「…うらさんにもGPS渡しとけば良かったわ」



うらた君が保健室のドアを開けた。

後ろにはセンラ先生がいる。



「…よくもやってくれたなこん餓鬼が」



先生はゆらり、と歩いたかと思うと、目にも止まらぬ速さで坂田君に掴みかかる。

が、坂田君も素早く身を引きそれを避けると、窓を開け枠に足をかけた。
横目でこちらを見ながら口を開く。



「今回はこのくらいにしとくよ。
次は本気でやるから。覚悟しといてよね」



坂田君はそのまま窓から外へ飛び出し、姿を消してしまった。それを確認したうらた君が駆け寄ってくる。



「大丈夫か、A」


「うん、大丈夫。ありがとう、うらた君。
それより、どうしてセンラ先生と居るの?」


「…俺、ただ足捻って冷やしに保健室来ただけだから。気付いたらセンラマンが後ろにいただけ」


「…え」


「音もなく後ろにいるもんだからビビったわ。
人間離れしたスーパーマン的な感じでセンラマン、ぴったりのあだ名だろ」


「うらたん」



唐突に、先生が私とうらた君の話に割って入る。
その声は低く、普段より落ち着きが無い。



「何ですか、先生」


「悪いけど、出てってもらってええ?」


「…後で話、聞かせろよ」



私に言ってから、うらた君は大人しく保健室を出る。

ドアが閉まったと同士、センラ先生は私を掻き抱いた。



「ごめん。助けたる言うたのに、俺、何もできなくて」



きっと急いで来てくれたのだろう、息が荒い。
彼の柔軟剤の良い匂いと汗の匂いが私を包み込む。



「そんなことありません。
屋上だって、今だって。先生が来てくれたから、私はこうしてここに立ってます」



揺れた彼のピアスが微かに音を鳴らした。

共通ルート20 呼んで→←共通ルート18 本当の



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (204 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
619人がお気に入り
設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雨上がりのcrew(プロフ) - お体に気を付けて更新頑張ってください−!! (2019年8月6日 18時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 彩葉さん» センラーさんにそう言っていただけて、嬉しい限りです!応援に応えられるよう頑張ります、コメントありがとうございました! (2019年5月1日 13時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
彩葉 - 私の推しセンラさんなんですけど、センラ先生最俺にも出ててマジで好きです!引退されるのはとても寂しいですが、最後まで応援させていただきます! (2019年5月1日 12時) (レス) id: ca54fe217e (このIDを非表示/違反報告)
羽飛(プロフ) - 浪音さん» 大変おまたせしました!今の所は引退を考えていますが、寂しいと言っていただけるととても嬉しくも思います。ゆっくりにはなりますが、これからも読んでいただけるならば、頑張って更新します!コメントありがとうございました! (2019年4月11日 17時) (レス) id: 188fe56108 (このIDを非表示/違反報告)
浪音 - 羽飛さんこれ完結したら引退しちゃうんですか...( ´-`)どうでも良い話ですが防音シェアハウスにて暴走中の時から応援してたので少し寂しいです。残りの更新頑張ってください!!応援してます!!! (2019年3月28日 20時) (レス) id: a925fc985a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:羽飛 | 作成日時:2019年1月23日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。