それは万能薬でない。２ ページ33
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｢大丈夫ですか？顔色が良くなさそうですけど｣
なんで、口から無意識に出たことばは誰にも拾われることなく風化した。異常であった。この空間において、監督生だけが、異質な色彩を放っていた。しかし、それは微温湯に入り微睡んでいるような柔らかさを孕んでいる。思わず目を閉じてしまいたいくらいには。なんで、なんで、貴方が気が付けるんだ。貴方は何もAのことを知らないクセに。どうして、
言葉尻はめっぽう甘く、眉毛は垂れて、不安げな色を宿した瞳は揺れ動いている。慈しみで溢れているそれは、虚ろな硝子玉をそっと労るように包み込んだ。
ダメだと思った。これ以上知らない所に行かれると思った。ゆるりと穢れの知らない手がAの方に伸びてしまう。いけない。これ以上は。いってしまう。その手をとるな。とおくに、離れてしまう。そっち側にいかないで。前をゆかないで。貴方は＿＿＿そうやって、いつも＿＿
｢ジェイド…いたい｣
閉じ込めていた熱がはたりと弾け飛んで、視界が幾らかクリアになる。ぱちぱち、数回瞬きをして己の名を呼んだ方へ視線を向けると、そこに居たのはAであった。先刻の虚無な瞳は過ぎ去って、今は悲痛の色が滲んでいる。ヒュッと喉奥から空気が漏れる。ぎゅうぎゅうと胸が締め付けられて、呼吸が上手にできない。
肩口に食い込んだ自身の手を見て悟ってしまった。痛みを与えてしまった。さいあくだ。さいていだ。そうさせてしてしまったのが自分だ。鈍い動きで手を離してやると、Aは歪めていた眉根を解いた。どっぷりと下肢が薄暗い暗影の中に引き摺り込まれていく。足先が動かない。ジリジリと追いやられるように感覚が身体中から抜けてゆく。でもそれでいいと思った。動かさなくていいなら、それでいい。決して抜け出せることの無い底無し沼に呑み込まれた方が、マシだと思った。
｢す、みません…指先から血が滲んでいるのが見えて｣
我ながら酷い言い訳の仕方であると、ジェイドは自嘲的な笑み零す。ただでさえ前をゆくAを止める方法がジェイドには思い浮かばなかったのだ。監督生に触れられていたら、きっとAはもう二度と戻ってこないと思った。それがどうしようもなく怖くて、恐ろしくて、それならと傷物にしてしまおうとした自分がまた恐ろしく、嫌になった。
最初からあの場に最適解など、存在しなかったのだ。
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27(にな)(プロフ) - 無名ちゃんさん» 無名ちゃんさん。コメントありがとうございます。はわわ、そう言っていただけで嬉しいです、、、、長ったらしく会話文あまりないので、受けがあまりよくないのかなと考えていたので良かったです涙。励みになりました、、、是非ともご贔屓にお願いします。 (2020年7月18日 19時) (
レス) id: 7dc834a05f (このIDを非表示/違反報告)
無名ちゃん - 初めまして！！コメント失礼します！！あああ、もう文章の表現がお上手というか原作沿いなのにここまで違和感なくオリジナル要素入れられるの尊敬します！！これからも頑張ってください！応援してます！ (2020年7月18日 18時) (レス) id: 760416d1ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：27(にな) | 作成日時：2020年7月9日 18時
