実験体は逃げ出したい【降谷零】

冷と学校 ページ49

「話とは」


「ええ。実は冷ちゃんの事なんですが」


俺はそのとき初めて冷の事について知った。一人で寂しい思いをしていたこと。苛められているが迷惑を掛けないと思い助けを求めないこと。


終盤俺は眉間にシワが寄っていた。そりゃこんな顔もしたくなる。


「冷ちゃんの両親は今何処に？」


「母さんはちょっと…その…」


言えるわけがないだろ。捨てられましたなんて、


担任は察したのか別の話題を出した。


苛めの対策はどうするかと言う。


「それって冷の意思の事ですか？」


「はい。迷惑を掛けたくない。そう私達に話していたのですが矢張ほっとくわけには…」


「あー…どの子か分かります？」


「一応把握済なんですが…宜しかったら電話番号お教えしましょうか」


「よろしくお願いします」






「お兄ちゃん。なんでここに？」


「先生にちょっと呼ばれちゃってね。冷お勉強頑張ってるんだってねー！」


いいこいいこと撫でてあげると嬉しそうに頬を緩ませた。痛そうな痣も傷も見当たらないと言うことは精神的なやつか。


隣を通る小学生の女の子達は俺を見てキラキラと目を輝かせる。そんな視線向けちゃいけないよ。こんな犯罪者に。




「八水さん…？」


名前を呼ばれバッと振り向くとそこには俺の事を救ってくれた救世主(メシア)が呆然と立っていた。


もう会わないと思ったのに。まさか同じ学校だったなんて。先に調べておけば良かった。


「お兄ちゃん？どうしたの」


「…何でもない。気のせいだったよ。」


と用意していた車に乗って帰った。

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