実験体は逃げ出したい【降谷零】

絶望のティータイム ページ30

「俺は…」


囚人を乗せる時に使われる様な護送車で俺は膝を抱えてボーッとしていた。


コナンくんは今頃解放されているだろう。彼に申し訳ない。沖矢さんも多分色々としてくれただろうけど…


保護…と言うよりも格納されるだろう。


実験体は実験体らしく心など要らないとでも思ってるのか？


「本…語ってない。」

扉を押すが鍵が掛かっているせいかガチャガチャと虚しく音が鳴るだけ。


「助けて…助けて…兄ちゃん…」


次第に叩く気力すらなくなって丸くなって恐怖から逃げることしかできなかった。






数時間して扉が開けられた。


その隙をついて逃げようと考えたが大勢の人に銃を向けられていてそれはできなさそう。


「さぁ。行こう。」


兄さん手を引かれ連れてこられた真っ白い部屋。ガラス越しに兄さんが見える。


「今から此処がお前の部屋となる。辛いだろうが安心しろ。組織の奴等の目からは逃れられる。」


「安全とかどうでもいい…帰らしてよ…」


実験室に居たときと同じ顔をされても俺が喜ぶわけないだろ。そんな悲しそうな目で俺を見ないでくれ。


「ああ。分かった…俺はこれから色々とやらなくてはいけないことがある。また来る。」


「酷い。酷いよな。」


これは彼の不器用ながらの親切なんだろうけどそれを憎いと思っている自分が酷い。



そして俺が絶望に染まったときのこの髪色も。


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