実験体は逃げ出したい【降谷零】

逃げる精神貫く根性 ページ26

兄さんがコナンくんのところにいたのはどうしてだろうか。


俺は全く兄の事を知らない。ちゃんとした声すら、


只『ウィスキー』の種類としか名前と呼べるものを知らない。あのときに名前だけでも聞いていればよかったのだろうか。


自分が一番信じたい相手が今となっては信じられない。


「ごめん兄さん。俺、もう少しこのままでいたいんだ。」


自分を振り切り、風呂から上がった。






『まってよ。兄ちゃん！』


『しょうがないな！おんぶしてやるよ。ほら』


『ありがとう。××兄ちゃん』


少しの夢で目を覚ましてしまった。見たくないと本能が喚くもので俺はそこしか夢を見れなかった。


もう少しで兄ちゃんの顔が思い出せたのに。


「もう一度この夢を見ていたい」


まだ夜があけない。面影のない俺の髪が目の端で揺れる。時に幸せは酷なり。そう心の中で俺は思った。


人はいつか死ぬ。それが今か、それともずっと先か。


「もう少しで全部。全部元通りに…」


布団に潜ったら泣く気など更々なかったのにポロポロとダムが決壊したように溢れた。もう枯れたものだと思っていたが生きている限りそれはないらしい。





「＿＿＿」


「んん…」


「＿。起きろっ！！」


「うわあ！！」


大きな声でモーニングコールをされ飛び起きると沖矢昴の中途半端な格好をした赤井さんがドア付近にたっていた。


「おはよう…ございます。」


びくびく怯えながら挨拶を確りする。


「安室透と言う人物は知っているか」


安室透？誰それ。俺が交遊関係少ないのに聞いてくると言うことは重要人物か？

「知らないと駄目だった系ですか？」


「…金髪で褐色の肌を持った蒼色垂れ目の童顔の奴だが。心当たりは…おい？おい！」


兄さん…兄さん…全て兄さんに当てはまる。会いたい…会いたくないような…


「どうやら知っているようだな。」


「にいさん」


「は？彼は兄だったのか！？」


「あ、いやその…」

あまり話したくない。と顔を伏せる。

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