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誑かすな ページ11




 時「こんばんは伊黒さん」

 伊「何だ」


 師範は眉間に皺を寄せる。

 わざわざそんな顔しなくてもいいのにと思ったが口

 には出さなかった。


 時「今夜A借りてってもいいですか」

 伊「は」


 地を這う様な低い声。

 驚いて師範の顔を見ると、数年で一度見るか見ない

 かレベルの恐ろしい顔をしていた。

 何か問題でもあるのだろうか…

 時透さんはその顔に物怖じすることも無く口を開

 く。


 時「駄目なんですか?」

 伊「当たり前だ。お前、下手なことしたら不死川に

  殺されるぞ」

 時「下手なことなんてしませんよ」


 馬鹿なんですかとも言いたげな顔で師範を見つめ返

 す時透さん。

 度胸が凄まじい。


 伊「全く…Aも暇じゃないんだ。毎日不死川の

  屋敷とここを往復してるんだぞ。お前の夜遊び

  に付き合ってられるか」


 夜遊びなんてまぁ人聞きの悪い…


 時「うーん…じゃあAはどうなの」

 『え?』

 時「ねぇ遊びに行こうよ」


 どこに行くのだろう。少し気になる。

 救いを求めて師範を見ると、ほら見ろと言わんばか

 りに時透さんを見た。


 伊「Aも困っているだろう」

 時「伊黒さんが下手に引き止めるからじゃないです

  か…?」


 これじゃあ埒が明かないと思いつつ心の中で特大溜

 息をついて部屋を出た。


 『私はどっちでもいいんですけど…何とかしといて

  くださいね』


 自分が決めても時透さんに引き摺られてでも連れて

 行かれると思う。

 いつも通りきっちり結んだ髪を解いて櫛で梳いてい

 ると、スパンッと心地いい音を立てて襖が開かれ

 た。

 犯人はやっぱり時透さん。


 『…何ですか』

 時「今日だけならいいってさ。行こ?」

 『どこに行くんですか』

 時「食事処」

 『早すぎません?』

 時「いいじゃんいいじゃん」


 あれよあれよとしている間に屋敷から連れ出され

 た。

 師範も酷く疲れた顔をしていて、だいぶ長い間交渉

 されていたんだなと感じたのだった。



 伊「おい時透」

 時「?」

 伊「あまりAを誑かすなよ」

 時「…そんなまさか」


 時透さんは少し笑った。

手を引いて→←帰宅



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作者名:三三七拍子(三度目の正直) x他2人 | 作成日時:2019年12月29日 21時

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