検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,083 hit

手紙 ページ4

「アヌビスさん起きてくださーい! 今日のご飯はロコモコ丼ですよー」
「ん……あぁ、おはよう……」

 郁田が自室に入ってきて、俺の体を揺する。ほのかに美味しい匂いが漂っていて、少しずつ俺の意識は覚醒していった。

「おはよう……郁田……」
「おはようございます! 先に食べてるので、早く来てくださいね!」

 愛らしい笑顔を浮かべて、リビングへと郁田は戻っていった。うすピンク色のエプロンが見えなくなって、よっこらせと起き上がる。
 初めはカタコトだったのに、もうあんなに喋れるようになったのか。それに、料理もできるようになっているし。
 クローゼットからいつものように白衣とラフなシャツ……ではなく、余所行きの洋服を取り出す。今日は久しぶりに事務所に顔を出そうと思ったのだ。
 アポ無しで行っても怒られそうだな……電話って大丈夫だったっけ……

「アヌビスさーん、早く来てくださーい」

 郁田の綺麗な声が俺の名前を呼んだ。

「はいはーい」

 服をパパっと着て、リビングへ向かう。美味しそうなハンバーグの匂いと目玉焼きの匂いが溢れていて、よだれが垂れそうになる。

「いただきます」

 郁田は既に食べ終えていて、俺が食べる様子をニコニコしながら見ていた。

「美味しいですか?」
「ああ、とても美味い」

 良かった。そういうと郁田は席を立ち、洗いものをしに行った。
 ロコモコ丼をかき込み、台所に片付けに行く。ついでに洗いものを手伝い、今日の予定を話す。

「一週間くらい前に手紙が来てな、前の職場の同僚に会わないかって言われたんだ」
「へぇ〜、行くんですか?」
「ああ、郁田も行くぞ」
「わ、私もですか!?」

 よほど驚いたのか、食器を床に落とし割ってしまった。

「わわわ…ごめんなさい」
「いいや大丈夫だ。あとで片付けておく」
「で……私も行かなければいけないのですか?」
「覚えてないだろうが、職場が同じだったからな」
「そ、そうなんですね…分かりました。ちゃんとした格好に着替えてきます」

 話している内に洗いものは終わり、郁田は着替えに、俺は電話と清掃用具を取りに台所を離れた。
 ササッと破片を集めて布袋に詰めて、電話を取り出す。昨日久しぶりに充電したものだ。

「ふぅ……」

 気分が重いが、覚悟を決めてかける。

「もしもし、716事務所でしょうか」

 電話に出たのは意外なやつだった。

「その声は…アヌビスさん?」
「メジェド?」

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←記憶



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:アヌビス , エジコイ , BADEND
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あまごいちじく | 作成日時:2016年9月21日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。