手紙 ページ4
「アヌビスさん起きてくださーい! 今日のご飯はロコモコ丼ですよー」
「ん……あぁ、おはよう……」
郁田が自室に入ってきて、俺の体を揺する。ほのかに美味しい匂いが漂っていて、少しずつ俺の意識は覚醒していった。
「おはよう……郁田……」
「おはようございます! 先に食べてるので、早く来てくださいね!」
愛らしい笑顔を浮かべて、リビングへと郁田は戻っていった。うすピンク色のエプロンが見えなくなって、よっこらせと起き上がる。
初めはカタコトだったのに、もうあんなに喋れるようになったのか。それに、料理もできるようになっているし。
クローゼットからいつものように白衣とラフなシャツ……ではなく、余所行きの洋服を取り出す。今日は久しぶりに事務所に顔を出そうと思ったのだ。
アポ無しで行っても怒られそうだな……電話って大丈夫だったっけ……
「アヌビスさーん、早く来てくださーい」
郁田の綺麗な声が俺の名前を呼んだ。
「はいはーい」
服をパパっと着て、リビングへ向かう。美味しそうなハンバーグの匂いと目玉焼きの匂いが溢れていて、よだれが垂れそうになる。
「いただきます」
郁田は既に食べ終えていて、俺が食べる様子をニコニコしながら見ていた。
「美味しいですか?」
「ああ、とても美味い」
良かった。そういうと郁田は席を立ち、洗いものをしに行った。
ロコモコ丼をかき込み、台所に片付けに行く。ついでに洗いものを手伝い、今日の予定を話す。
「一週間くらい前に手紙が来てな、前の職場の同僚に会わないかって言われたんだ」
「へぇ〜、行くんですか?」
「ああ、郁田も行くぞ」
「わ、私もですか!?」
よほど驚いたのか、食器を床に落とし割ってしまった。
「わわわ…ごめんなさい」
「いいや大丈夫だ。あとで片付けておく」
「で……私も行かなければいけないのですか?」
「覚えてないだろうが、職場が同じだったからな」
「そ、そうなんですね…分かりました。ちゃんとした格好に着替えてきます」
話している内に洗いものは終わり、郁田は着替えに、俺は電話と清掃用具を取りに台所を離れた。
ササッと破片を集めて布袋に詰めて、電話を取り出す。昨日久しぶりに充電したものだ。
「ふぅ……」
気分が重いが、覚悟を決めてかける。
「もしもし、716事務所でしょうか」
電話に出たのは意外なやつだった。
「その声は…アヌビスさん?」
「メジェド?」
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←記憶
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あまごいちじく | 作成日時:2016年9月21日 20時