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「ほんまに、そんなタラタラしてると取られるんですよ俺に。」
後輩と飲みにきていた時、遥輝が急にこんなことを言った。
「は?取るって何を取ると?」
「Aさんっすよ。」
「A?」
どうやら、球団職員をしている俺の幼馴染のことを言ってるらしいが、話がよくわからない。
「卓さん知らないと思いますけど、俺、猛アピール中っすからね。この前の金曜日は2人で飲みに行きましたし、宅飲みもしたことあるし、それに....」
「ちょっと待て、いつからそんなに仲よかったと?」
Aと遥輝がこんなに仲良いって知らなかったんだけど。
「いつからって言われたら、そりゃ卓さんが煮え切らなくてイライラしてからっすかね」
「なっ.....さっきからお前、俺があいつのこと好きみたいな「え?違うんすか?」
言葉を遮って問いかけてきた遥輝に「違う。」ってすぐ言えない自分に驚いた。
見透かしたように目を細めて見て来る。
手汗がじんわりとかいてきて、間をごまかすために酒を飲んだ。
「好き....なわけなか。幼馴染やけん、ただの女友達やあいつは、室岡みたいなもんやけん。」
うん。そうだ、あいつは友達だ、というか家族だ。
一緒にお風呂だって入ったことあるんだ、
「それに、あんなちんちくりんな奴、ちっちゃい頃は一緒にお風呂も入ったことあるけん。妹みたな奴や、Aは。」
「ちょ、卓さん。」
「あ?聞いてきたんお前やろ」
「じゃなくて...」
『なんかごめん、帰る。』
「Aさんっ!!もう、卓さん全然気付かないとかありえへんわほんまに〜」
「じゃ、落ち込んでる彼女を慰めるとかこんなに絶好のチャンスないんで、俺行ってきますね!卓さん奢りあざす!」
「ちょっとおい、遥輝!!」
居酒屋の個室に1人取り残された俺。もともと俺が誘ったから払うつもりではあったけど、こんなことになるとは.....
「ていうかA呼んでたと.....」
聞かされてなかったし、あいつがくるなんて。
もう一杯酒を煽る。
いつから聞いていたんだろうか、俺が思いもしないことまくし立てるように言っていたのは聞いてしまったのだろうか。
にきてもあいつのあんなに青い顔は見たことがなかった。
ちょっと待て、“思いもしないこと”って
「なんだ、俺好きなんじゃん。Aのこと。」
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作者名:amn | 作成日時:2017年10月26日 2時