第2話 教室 ページ2
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目を丸くして固まる彼に突然声をかけて、すぐ。
気まずそうにした彼はふと目を逸らした。
それでも私は諦めるつもりはない。根気強くもう一度お願いしてみよう。そう決心して、また声を出そうとした時だ。
「お！？」
私の声を遮るように、誰かが叫ぶ。そちらを見てみれば、校舎の中から見知らぬ男性がこちらに向かって近づいてくるのが見えた。ここの教師だろうか。男性は私の目の前の彼を見るなり、また叫んだ。
「ムン・ビン！」
と。
ムン・ビン。それが彼の名前だった。
特にピンとくるわけじゃなかった。それが悔しくて小さく息を吐く。すると男性は私を見て、目を丸くした。ちょうどさっきの彼のように。
「…ソ・A？」
「わたしのこと…」
「そうか、そうか、元気そうでよかったよ」
男性はそう言って、校門の上から手を伸ばして強く私の手を取った。
その男性は、本人によれば高校1、2年のときの担任だったという。彼に勧められて門を潜り、自己紹介を聞きながら職員玄関を通る。
「事故のこと、聞いた時はびっくりしたよ」
担任がそう言う。
私はただ笑って誤魔化す。どう返事をしたらいいのか、正直迷った。
「お前もじゃないか？ムン・ビン」
隣の彼は、悲しそうに笑った。
「じゃあ、授業あるから」
帰る時は職員室に顔出せよ。そう言い残して担任が部屋を後にする。
案内されたのは私が1年生のときに使っていた教室、らしい。今は新校舎が別にあってこっちはあまり使われていないらしくて、私たちは自由に時間を潰す許可を得た。
ドアを背中に動けずにいる私とは反対に、ムン・ビンさんはゆっくりと机と机の間を歩きはじめる。この教室の空気を懐かしんでいるようだった。
さっきまでの勢いは何処へやら。まともに会話もしたことのない人と突然密室に2人きり。そんな状況に緊張して話しかけられない私。
知らない教室。さっき会ったばかりのムン・ビンさん。全てが私を置いてけぼりにするみたいに感じた。
そんなとき、ガタッという音が教室の中に響いた。ある席に座ったムン・ビンさんは、その隣の席の椅子も引いてこちらを見た。
「ここ、Aの席だよ」
そこは真ん中の列の1番後ろの席。この空間を噛み締めるようにその席に近づく。懐かしさは感じない。
誘導されるままそこに座って高校生になりきって黒板を見つめる。それでもだめだった。
「本当に、記憶がないんだな」
ムン・ビンさんが、呟いた。
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えす(プロフ) - かにかまるんさん» そう言っていただけてうれしいです！ありがとうございます。頑張ります！ (2020年12月2日 18時) (
レス) id: a45323d796 (このIDを非表示/違反報告)
かにかまるん(プロフ) - ASTROのお話少ないので嬉しいです!!これから更新楽しみにしています！主様のペースで頑張ってください!!応援してます…!! (2020年11月30日 1時) (レス) id: bc18b0ebfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：S | 作成日時：2020年11月23日 2時
