少女は幼女に転生しブラック本丸へ

29話 ページ29

自分から怪我するつもりで近づいた訳じゃなかった。


隙を狙って、乱様に触れて霊力を流すつもりだった。でも、あんなに一気に距離を詰められると思わなくて……



いや、こんなのただの言い訳に過ぎない。結局は私の注意不足だ。

小夜ちゃんたちの言う通りにしとけば、薬研は怪我しなかった。乱様に兄弟を傷付けさせなかった。





『ごめんな、さい……っ』

「「「！！！」」」



この体は本当に涙が出やすい。

いくら拭っても溢れてくる。こんなの、皆を困らせるだけなのに。




小「なんで謝るの…？」

『ﾋｸｯ わたしの、せいで…やげんが、けがしたっ！』

薬「！琥珀…」



いくら手入れで直るとしても、痛いものは痛いはず。


小夜ちゃんは無言で私の涙を拭いてくれたが、止まる様子はなかった。


ふと顔を上げると、タイミングがいいのか悪いのか、乱様と目があった。

乱様は私を睨むが、襲ってくる様子はなかった。




もう、同じ過ちは繰り返さない。


『ｺﾞｼｺﾞｼ……ていれ、してもいい？？』

乱「え、」




無理して近づかない。距離を保っての話し合いが今の私たちには最適だと思う。



『けが、いたそう…。だから、していい？』

乱「な、何で……」



？？？



乱「ボクは、あんたを殺そうとしたんだよっ！？なのに、何でボクの手入れをしようとするの！？」

『！！』




確かに、自分が殺そうとした相手にそう言われるのはおかしいよね。


でも、私は怪我してないし、むしろさっきのは私が悪かった。





『……みだ…おねえさんは、わるくない、よ？さっきは、ごめんなさい……。』

名前を呼ぶなと言われたことを思い出し、急いで訂正した。


お姉さんであってるよね…？




乱「ボクは、悪くない……っ？……何で、何でそんな……ッ」

刀から手を離し、両手で顔を覆う乱様。まさか、泣いてる…？




乱「ボクはただ、皆を守りたくてっ」ﾎﾟﾛｯ

薬「乱……」

骨「……」



薬研と骨喰は泣いてる乱様の肩に手をのせた。

骨喰は私の方を見た。近づいていいって事なのかな？



私はゆっくり乱様に近づき、顔を覆ってる手にそっと触れた。

乱「ﾋﾞｸｯ」


少し震えてるけど、拒みはしなかった。

顔を上げ、私を見る乱様。私は怖がらせないよう微笑んだ。




『いたいのは、もう、ないから…』


傷が治るように祈り、霊力を流した。

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