【キミガシネ】ケイジくんの危険な夏の恋 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:1,830 hit

1回目の告白。ページ1

どこへ行こうと蝉が鳴くような、そんな季節。

精々カビ臭い気のするエアコンが効いた家の中か、近所のスーパーにしか涼しさは感じ取れない。
額から流れ顎先に伝っていく汗は、脳内に響くジンジンとした音を肥大させているように思えた。

ああ、うっとうしい。

敬二は乱暴に顎先を拭って立ち上がった。
ここ最近、自転車が川に落ちてからはどうも運が悪い気がする。おまわりさんがいてくれたこと、落とした自転車をそのおまわりさんが直してくれたことは幸運だったが、どうしても…否、だからこそ、それ以外の嫌な出来事は目につくというものだ。

自然によった眉間のしわをそのままに、足先を近くの森へと向ける。人気のない場所を進んでいけば、木陰などに隠された『秘密基地』が冷えた風と共に敬二を迎えてくれた。

いつもの定位置に座って、近くを流れる冷水と戯れながら『あいつ』を待つ。『あいつ』とは、敬二にとっては唯一無二の、『幼馴染』である。

家は遠い。顔ほあまり合わせていない。話したこともない。学校が一緒で、クラスはとなり。たまに廊下ですれ違う程度の、あいつ。
敬二が小二のころからずっと目で追いかけていた、あいつだ。

今日こそは声をかけたい。

波打つ鼓動を感じながら、目の前で飛び回るカエルの背を見ていた。あと少し、もうそろそろ。

ガサ

「ぁ、」
来た。
あいつ……『サガワ』はスコップを片手に生い茂る植物を掻き分けてきた。敬二には気付いていない様子で、川に沿って歩いていく背中。
カエルの時とはうってかわり、敬二は忍び足でついていった。

サガワは足を進める。今日のためにスコップを祖父から借りてきたのだ、日が沈む前にさっさと帰ってしまおう。後ろからの熱烈な視線には気付かないまま、サガワはとある場所で立ち止まり、スコップを土に差し込んだ。

ザクザク、と掘り進めること数分。

こつん、とスコップの先と衝突したのは、お菓子の箱だった。土の中にか、と思わず口にしてしまったが、サガワはそれをすくい上げ、蓋を、開けた。

「好きです、付き合ってください」

とある、夏の話である。