春を呪う／gr ページ17
足りない。
何かが足りない。
その何かとは何か。
そんな事はもうとっくに分かっている筈で。
それでも認めたくないと思っていて。
自分が認めなかった所で
現実は何も変わらない事も知っていて。
この締め付ける感情が解らない。
解らないと嘘をついた。
窓から見える春の景色は何も変わらない。
取り残されているのは紛れもなく自分自身で。
部屋の窓際から見える桜を一人で見るのも2回目で
時間が進んでしまった事を否応無しに痛感させる。
離れれば忘れられる。
ならばなぜ今Aの事を思い出しているのか。
それは俺がAから離れられなかったからだ。
忘れられないのがその証拠だろ？
もう一度会いたいと
今でも好きだと
言えば帰ってくるのかと
何度考えただろうか。
帰ってくる事なんてある訳が無いのに。
なぜ手離すような真似をしたのだろうか。
いや
手離した訳じゃない。
居るのが当たり前になっていたんだ。
それでも結局
Aに甘えて
放っていたのがいけなかった事を
突き刺される様に理解する
外に出る度に
街の至るところにAの姿が映る。
その所為で随分この街に住みにくくなった。
それでも引っ越さないのは。
いつかAが戻ってくるんじゃないかという
舐め腐った甘い考えと
手から零した深い後悔と
染み付いて取れない未練だ
こんな未練がましい男では無かった筈なのに。
Aに会ってから色々と変わってしまって
俺は昔の俺ではなくなってしまった。
たとえA以外の女と結ばれたとしても
一生Aを忘れることは出来ないのだろう。
あぁ、これは呪いだ。
俺が俺自身にかけた
解ける事の無い愛の感傷だ
ふとした瞬間に
風が吹き
枝が揺れ
はなびらが舞い散り
窓に吹き込み
部屋に入って来た
俺ははなびらを掴む様に手をひらき
そのままグッと握りしめる。
手をひらいても何も無く
はなびらは床に落ちていた。
まるで俺の手から滑り落ちてしまったかの様に。
きっとこういう事なんだろう。
最初から掴めてなんていなかったこと
頭の中では分かっているんだ。
ただ
心で解りたくないだけなんだ。
だから今日も
Aと出逢って別れたこの街で
執着心を植え付けながら
気味の悪い呪いを抱えて
生きていく
俺の事なんて忘れて
過ぎていく時間の中で
続く
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なっか(プロフ) - すいません、御指摘ありがとうございます。助かりました。 (2018年5月12日 7時) (
レス) id: e19c01291e (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグ外し忘れていますよー違反行為なのでちゃんと外して下さいねー (2018年5月11日 6時) (レス) id: 1d77437daa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なっか | 作成日時：2018年5月10日 22時
