137話 ページ21
秦国がこれ程の兵力を投入出来たのには、王猛と張賓の力があった
王猛は、オリエントやソグディアナから戦地に向けて食糧と兵士を送り、それを途絶えさせることなく秦国を後方から支え、しかも漢の民衆を苦しめることもなく、名丞相として称えられた
張賓は漢の外務大臣として、外交を活発に行い、漢の国境を完璧に安定させており、それが兵力提供の基礎となっていたのだ
合従軍が成都に目を奪われ占領に躍起になっている頃、Aは秘密裏に一つの作戦を遂行中であった
『成都での戦が始まって…あの時描いた勝機がようやく形を成して浮かび上がった…あとは手に取るだけだ。行くぞ!!六国の精鋭達を滅ぼす!!』
恪「ハッ!!」
勒「おお!!」
垂「楽しみだし!」
虎「ウフフ…全くですわ」
珪「出撃だ!」
それは、秦国の北部にいる自身の軍を使って合従軍の背後に回り込み、補給を分断してしまおうというものであった
そのために徹底的な無電封鎖を行い、昼間は息を潜めて身を隠し、夜間に大部隊を移動させていた
その奇襲作戦は2ヶ月以上もかけて用意周到に準備されていたものであった
移動は極めて過酷であったが、この軍はオリエントやヘレニズム諸国を全て平らげた…天下無双の軍隊であり、全員がAに心酔していた
合従軍には、どうしようもない弱点があった
魏はそうでもなかったが、燕·斉·韓と言った楚の同盟国の軍隊が楚軍に比べて、装備も悪く士気も低い上に脆弱であることであった
おまけにこれらの同盟国は、楚軍と仲が悪いと来るので、中に割って入って補強することもままならぬ状態であった
成都に突入した合従軍の側面と後方には、こうした頼りにならない脆弱な同盟国の部隊が細長く伸び、武関から成都にかけての広い戦線を受け持っていたのであった
したがって、手薄なこれらの一カ所でも突破されると、たちまち合従軍の補給が断たれる危険があった
勘のいい人物が、40万の秦北部軍に予測できない動きがあり、軍の後方の補給ルートが危ないと申告した
しかし六国の王はそれを聞き入れず、人物は解任されてしまった
こんな風であったので最早、誰も怖がって王達の機嫌を損ねるようなことを口にする者はいなくなってしまった
そのため周囲にいるのは、王達の言葉をおうむ返しに実行する操り人形のような人物ばかりになってしまったのである
楚軍を率いていた殷浩もこうした1人で、楚王や項燕の命ずるままに軍隊を動かす男であった
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作者名:やなゆ | 作成日時:2022年3月28日 7時