侍の紅一点 (ページ40)

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過去編18話ページ40

後半になっても、大阪桐蔭の勢いは止まらない

Aは2本の本塁打を放ち、投手としても三重打線を手玉に取る

三重高校には、手詰まり感が漂っていた

「野球は役割の分担された競技だが、基礎練積んで兵士の様にバランスの良い選手で固めれば勝てるという訳ではあらへん。基礎も大事やけど、最後にモノを言わすのは選手の個性が産む爆発力や」

「にしても、三重高校だって総合力の高いチームですよ。3年間同じ仲間と共にじっくりと積み上げてきたチームが、大阪桐蔭の下級生達に圧倒されるとは…」

「確かに、弱い県ならそれでもええ。でも、全国の強豪となるとそうはいかん。ある意味この結果は必然や」

中村監督は大阪桐蔭が前人未到の時代を作るのを確信した

こうして試合が終わる

「ば、バカな…こんな事が…」

三重高校監督は腰を抜かした

最終スコアは18-2であった

三重高校の選手達はまるで甲子園を逃したかのように悔しがる

挨拶後、西谷監督は三重高校監督に述べた

「どうやら…審判はそちらさんの味方やったようですな」

西谷監督の意趣返しに、三重の監督は睨み殺しそうな視線を送るも、何を言っても負け犬の遠吠えにしかならない為、何も言えなかった

試合後、西谷監督はこのチームを今までの個人の成績重視から、個人技を活かしつつAをチームの絶対的な王として、他の選手はそれを支えるという方針を提案した

3年生と1年生は賛成するが、2年生の一部は今も反対を続ける

だが、蓮がAを称えた上でその方針に賛成した

今までAと不仲だと思っていた2年生達は驚き、一先ず認めた

これで方針変更は固まってきた

翌日岐阜に向い、県岐阜商と大垣日大と試合を行う

両校共に岐阜の強豪であったが、新たな方針に変わった大阪桐蔭に蹴散らされた

だが、大垣日大は監督の采配か老練な試合を見せて、Aを苦しめた

試合が終わった後に、大垣日大の阪口監督がやって来る

「凄いですなぁ、西谷くん。完敗ですわ」

「阪口監督…全て選手のお陰ですよ」

「謙遜しなくてもいいです。にしても、あの子が黒宮ちゃんやね。別嬪さんで野球の実力も桁違いやなんて、羨ましいわ」

Aが顔を赤くする

「甲子園で当たることがあれば、バチバチに戦り合いましょうや」

そう言って阪口監督は去った

「何か…朗らかな方でしたね」

「昔はなぁ…"鬼の阪口"とよばれてたんやで。スパルタ教育で"春の東邦"の基礎を築いたんや」

こうして、遠征は全勝したのだった