侍の紅一点 (ページ36)

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過去編14話ページ36

「(夏の大会は、勝ち進むに連れて気温が増す中での試合をする必要がある。特に準々決勝以降の気温はかなり暑い。だがウチはそこでも変わらず…いや、最高のパフォーマンスを発揮しなければならん。こればかりは、一朝一夕で解決出来るもんやない)」

それでも、西谷監督は選手を信じる

8回裏、2アウトながら満塁のピンチを招き、迎えるのは中京大中京の4番

「うーん。調子が悪い中でも粘ってるんやけどなぁ…」

「とはいえ1年生の女子高生…流石に交代か？」

ここで、中村と蓮がAの元にやってくる

「キツイのは分かってるけど…あの打者は怖いか？」

蓮が尋ねた

『蓮先輩…別に怖くありません。少し疲れただけです』

「なら大丈夫だ。怖いはどうしようもないけど、お前は常葉大菊川と名電を完封し、東邦と静岡を打ち砕いたんだ。自信持って投げろ！」

「A。お前は1人じゃない。仲間がいるんだぜ」

そう言うと、蓮と中村は持ち場に戻った

『蓮先輩、中村くん…ありがとう…！』

Aはそう言うと、強烈なストレートを投げ込む

「！？(バカな…！？調子が悪いんじゃないのか！？)」

相手の打者はAを恐れた

次のシュートを見逃し、2ストライクとなる

「ナイスボールA！強気でいけ！」

「踏ん張れーA！後ろには俺達がついてるぞ！」

「自信持って投げろ！打たれても絶対に逆転してやるからな！」

ナインがAに声援を投げ掛ける

最後はスプリットで三振を取り、ピンチを無失点に抑えた

その様子を…東海大相模の監督、門馬監督が見ていた

「(選手達だけで立ち直るとは、相当に鍛えられている…このチームは今年も優勝の最有力候補か…)」

門馬監督はそう思うと、その場を去った

蓮の2ランで待望の追加点を挙げると、最後は三者連続三振で終わらせ、試合終了となった

当初は疲れで思うように動けなかったが、終わってみれば及第点の結果であった

「すげーなぁ、黒宮A。最初は本来の動きじゃなかったけど、終盤は桁違いだったな！」

「あぁ。あーゆー選手が全国制覇を成し遂げるんだろうなー。だろ？…宏斗？」

宏斗と呼ばれた少年は目を輝かせる

「…決めた。俺は中京大中京(ここ)に入って、全国制覇を目指す！そして、黒宮(あの人)よりも凄い球を投げて見せる！！」

後のWBC日本代表…髙橋宏斗は、この試合を見てそう思ったのだった