侍の紅一点 (ページ33)

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過去編11話ページ33

『…そっか。ねぇ中村くんと増田くん。私と神凪先輩…どっちが強いと思う？』

「へ？そりゃAだと…」
「そんなの…Aだよ」

『ありがとう。丸山くんと西巻くん。私と神凪先輩…高校野球での実績があるのはどっち？』

「流石にそれは年数の差で…神凪先輩」
「俺も丸山と同じ意見」

『そうだよね。…別に私は神凪先輩を恐れてる訳じゃないよ。大阪桐蔭が全国制覇…更に夏春連覇や春夏連覇を達成する為には、私や中村くん達、神凪先輩の力が絶対条件になる。今私と神凪先輩が争ったら履正社を初めとした大阪の強豪達や甲子園優勝を狙う名門校を喜ばせるだけ。私がこうするのも、チームの和を個人の争いよりも優先するからだよ』

「「「「！！」」」」

『あ…ご、ごめんね！難しい話しちゃって！』

「いや…俺達が浅はかだった！そんな深い思慮があったなんて…！」

中村達は大いに感服した

そして、その話は蓮の耳にも入る

「お、俺は野球人として…部の先輩としても恥ずかしいことをしてしまった…！」

蓮は心打たれ、自らを恥じてAの部屋を訪ねた

そして部屋に入るやいなやAに深々と土下座をし、バットを差し出す

『神凪先輩！？一体何を！？』

「俺は…貴女の大きなお心を知らず、選手として…そして部の先輩として許されない行為をしてしまった！このバットで気の済むまでこの身を打ちのめしてくれ！選手生命が絶たれても俺はそれを恨まないし、貴女に咎は負わせない！しかし俺が今まで与えた屈辱をそんな事で償えるとは思えないが…！」

蓮は贖罪を請うた

『そんな！私には大それた話です！先輩がいてこその大阪桐蔭です！先輩無しでの全国制覇なんて有り得ません！』

Aは蓮を許し、蓮は大粒の涙を零した

「俺は！貴女の為なら死んでも悔いは無い！共に協力し合い、前人未到の成績を残そう！」

『はい！』

この日以降、Aと蓮は熱い友情の絆で結ばれ、それぞれ名前呼びする程になる。和解は2年生に知らせなかったが…

またAの自主練に蓮も参加し、その中でもスタイルの近い中村は蓮に目をかけられ、自身の教えられる打撃技術を叩き込む

結果、中村は6月時には3番に定着した

また、4番の重圧から解放された蓮は練習試合で打ちまくり、それで4番のAが敬遠されなくなり、Aの成績も激増する事になる

「く、くそっ！強すぎる！これが今年の大阪桐蔭か…！」
「プロ級が何人もスタメンにいやがる！」

練習試合の相手は、桐蔭を恐れた