侍の紅一点 (ページ32)

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過去編10話ページ32

春の地区大会を優勝で飾り、勢いづく大阪桐蔭

その立役者であるAは、3年生や同じ1年生から不動の信頼を勝ち取った

また、その美貌からマスコミの取材も殺到…ギャラリーは例年よりも爆発的に増え、練習試合の申し込みも過去最多を余裕で更新した

だが、それを面白く思わない人達が…

「…チッ」

2年生のファーストで高校通算42本塁打を放った5番打者…神凪蓮である

蓮は中学時代は無名の存在で、入学当初は殆ど目立たない存在だったが地区大会を契機に頭角を現し始め、1年目の夏の大会からレギュラーになって大活躍、秋の大会から4番を務め続けた。Aが活躍した春の大会でも結果を残した

それだけに2014年の全国制覇とベスト4は自身の力だという自負も強かった

2年生も殆どは蓮と同じ考えであった

だがAは入部するとほぼ同時にレギュラーとなり、地区大会時には自身を押し退けて4番に座っていた

自身が不振でAが絶好調ならまだしも、春の大会は昨年以上に好調だった為、4番を奪われるのは納得出来なかった

「俺は入部してから必死の思いで実力を積み重ね、全国制覇とベスト4に貢献し、春の大会でも結果を残した。だが黒宮は春大会で俺以上に活躍しただけで、4番を手に入れやがった！その下に居ることなど我慢ならん！練習と試合では邪魔はしないが…奴を見たら必ず辱めてやる！」

「蓮の言う通りだぜ！」
「先輩は許しても、俺らは認めねえ！」

蓮は自身の同級生達に、そうやって不満を漏らし続ける

元々家が貧しく、シニアやボーイズに所属出来なかった彼は、西谷監督にスカウトされなければ、無名の野球選手としてほぼ埋もれていた事だった。それ故に中学の野球エリートには元々含む所があった

また辱めるのも実直で腹を隠すのが大の苦手な蓮のこと…実際に行うであろうことは想像に難くない

故に、それを知ったAは出来る限り蓮に目を付けられぬ様に全体練習をこなし、日課の自主練も蓮達2年生に会わない様に行った

ある日、Aは自主練の場所が蓮と偶然かぶりそうになり、すかさず脇に隠れた

翌日の夜、Aの自主練に付き合っていた中村達は、Aに折り入って話があると申し入れる

「俺らがここに入学したのは、Aが天下無敵の選手でそれを敵に回したくなかったからや。なのに今のAの行いは小物でさえも恥じ入るような有様なのに、全く恥じる気もない！頼むから俺らを失望させんでくれ」

憤る中村達にAは真相を語る…