侍の紅一点 (ページ31)

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過去編9話ページ31

智辯和歌山も最後の抵抗を見せるが、勢いの増したAに太刀打ち出来ず、あっという間に2アウトを取られる

次の打者もシュートとストレートのコンビネーションであっという間に2ストライクを取られた

「(くそっ！俺らだって、智辯和歌山で死ぬ気で頑張って来たんだ！ノーノーなんて許してたまるか！)」

相手はストレート1本に狙いを絞るが、最後の球はストレートとほぼ同じ球速でありながら、かなりの落差を誇る変化球…スプリットであった

打てるはずもなく空振りに取られ、智辯和歌山はノーノーを喫したのだった

「(圧倒的なストレートの威力に切れ味抜群の変化球、それを完璧なコースに投げ続けられるコントロールと高いスタミナ！更にプロ野球のレギュラークラスの打撃力…同じ高校生でもここまで差が…)」

【三振ー！試合終了ー！大阪桐蔭春の近畿大会制覇ー！黒宮A、15歳にして名門智辯和歌山相手にノーヒットノーラン！夏の甲子園に向けて大きな弾みとなりました！】

「今年は昨年以上に強いぞ！大阪桐蔭！」

「いや、春夏連覇を達成した藤浪や森友哉の時以上じゃねェか！？」

観客は大興奮し、他校はAや大阪桐蔭を恐れる

「やったな！A！」
「この大会、全部お前が持ってったなぁ！」

Aは1年生や3年生達に揉みくちゃにされた

「すみません…打てなくて…」

「しゃーない。Aちゃんが凄すぎたんや」

「監督…確かに、投打共に凄い完成度です」

「…完成度か。それは少し間違っとるで。まだ未完成や。あの子の力はこんなもんやない」

「！？」

「今の生徒達は苦しくなるやろうが…儂が塩を贈ろうか」

高嶋監督はそう言って西谷監督の元へ向かった

「凄いですなぁ、西谷さん。ウチの完敗ですわ」

「高嶋さん…これは私の力じゃない。選手達です」

「それにしても、2年生の5番…神凪君も凄かったけど、Aちゃんは桁違いでしたなぁ」

「ありがとうございます」

「とはいえ、あの子の力は今の環境では最大に発揮できていない。もし私だったら…チームをあの子のモノに作り替えますな」

「何故、そこまで助言を？」

「野球人として…過去の不滅の記録を塗り替えるあの子が見てみたくなったんですわ。…まぁそうなると、1番苦しむのは岡田さんやろうけど」

「岡田監督と履正社は、それで諦めるほどヤワじゃありません」

「確かにそうですな。それでは…」

高嶋監督はそのまま引き揚げていった

西谷監督は高嶋監督の言葉に内心頷いた