侍の紅一点 (ページ30)

今日:16 hit、昨日:55 hit、合計:86,830 hit

過去編8話ページ30

智辯和歌山の守備陣は、大阪桐蔭打線の要所を抑えて点を取らせない

攻撃陣もAからヒットは打てないが、時たま四球で出塁して得点圏にランナーを進め、圧力をかける

そうこうしているうちに5回の裏を迎える

増田、中村の連続ヒットで2アウトながら1、2塁のチャンスを作り、Aに打席が廻る

智辯和歌山はここでも露骨なシフトを敷く

ここで西谷監督がAにアドバイスを贈る

「ここまでのシフトは初めてか？」

『はい。そうですね…』

「攻略法は簡単や。誰もおらんエリアに打てばええ」

「監督！言うのは簡単ですけど、するのは難しいんですよ」

「並の人間ならな。だけどAは違う。Aは桁違いの野球センスを秘めとる。最強はAで、Aのいる大阪桐蔭は天下無敵や」

『監督…』

「行ってこい。お前の一打で、智辯和歌山をぶっ潰してやれ！」

『はい！』

期待を胸にAは打席に立った

智辯和歌山もAにはインコース攻めを徹底し、流し打ちで強い当たりを打てないようにする

だがAはインローの球を流し打った

「(バカが。誰もいない所に打っても打球が弱ければ、ウチの守備陣なら易く捌く…)」

流し打ちしたAの打球は、凄い勢いのまま誰もいない位置を襲う

ボールは無人のエリアを転々とした

「はぁ！？んなバカなことが…」

智辯和歌山が驚いている間に、増田と中村がホームに帰り、Aも3塁に到達した

「な？言ったやろ。Aは最強やって」

「た、確かに…！こりゃ天下無敵や！」

大阪桐蔭のチームメイトはAに心酔する様になる

自ら援護したAはピッチングでのギアも上げ、智辯和歌山は出塁すら出来なくなった

打線もAの活躍に勢いづき、智辯和歌山投手陣を打ち砕く

Aも次の打席ではシフト方面へのタイムリー、次にソロ本塁打を放った

結果、5回まで接戦だった試合は、8回終了時点では8-0となっていた

「最初は分からなかったけど、結局は大阪桐蔭のワンサイドゲームかぁ」

「新戦力も桁違いだし、今年も全国制覇の最有力候補だな」

そこで、観客の一部が異変に気付く

「ちょっと待て！？智辯和歌山、まだヒット打ててねぇぞ！」

「本当だ！このまま9回もノーヒットだったら…黒宮の奴、ノーヒットノーランじゃねぇか！」

「智辯和歌山の野手陣は全国でも5本の指に入る…それを1年生の女子高生がノーヒットノーランを決めるのか…！」

1年生とは思えぬ偉業に、観客のボルテージが高まっていった