侍の紅一点 (ページ27)

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過去編5話ページ27

4回まで履正社を抑え、完全なワンサイドゲームになるかと思われていた大阪桐蔭だが、5回から崩れ始める

5回にエースが捕まって5点を奪われ、6回にも2点を取られる

7回は１死２、３塁のピンチを招き、次の打者に強烈な当たりを打たれてしまう

だがAがこれを横っ飛びでキャッチし、飛んだ状態のまま、飛び出していた2塁ランナーをアウトにし、併殺打にした

このプレーに履正社の選手は仰天する

「あ、有り得へん…完璧な当たりやったのに…」

履正社の岡田監督は冷静に分析する

「(やはり桁違いやな…黒宮A。一人前の野手になっている頃には、大体みんな3年…だけどアイツの実力はプロのトップに匹敵する…！)」

岡田監督が少し黒いオーラを出す

「(もっと真剣に調べて、スカウトしとけばなぁ…！)」

「か、監督…！？」

試合は17-12で大阪桐蔭が何とか勝利した

「凄かったなぁ…黒宮A」

「あぁ。でも課題も明白だな…長いイニングを任せられる先発の不在」

大阪桐蔭のエースはリリーフ型であり、それをエースにしなければならない所が、今の大阪桐蔭の現状であった

それでも、継投と打線の力で選抜ベスト4だったが…

「元々打線は全国でも最強…後は7イニングを3失点に纏めてくれる先発が現れたら、全国制覇は固いんだけどなぁ…」

課題を赤裸々にした大阪桐蔭であったが、準決勝の上宮太子、決勝の大阪偕星を破り、府大会優勝と近畿大会出場を決めた

Aは言わずもがな、中村、増田、丸山、西巻の1年生達も活躍し、一軍の座を不動の物とした

西谷監督はコーチ陣と課題について話し合う

「元々強固だった野手陣は、1年生がレギュラーに近づいている事もあり、益々強くなっています」

「ですが夏の大会まで後3ヶ月…投手陣は中々苦しい状況が続いており、乱打戦頼みの戦いを続けているようでは、今年の夏はかなり苦しくなるでしょう」

「…」

「ここは1年生も含めた全選手を対象に早急な投手陣の立て直しが必要かと…」

首脳陣が思案する中、ブルペンから凄まじい投球音が響く

そこにはアンダースローで152キロもの豪速球を投げるAの姿であった

次にスプリットとシュートを投げ、捕手の要求通りの場所に投げられる

西谷監督はコーチに聞く

「初戦はどこや？」

「はい。天理高校です」

「今年の天理の武器は打力…然るべき場面でアイツを投げさせる。結果によっては、このチームはAの物に作り変える」

Aに試練が訪れた