毒林檎[実況者] (ページ16)

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ご馳走さまでしたページ16

俺は、真っ暗闇の中に一人で立っていた
飲み込むような真っ暗闇。不思議と心地よかった

人類のたどり着く場所は、天国でも地獄でもなく、実は真っ暗闇なんじゃないか？

_____くだんね

人は一人になると余計なことを考えてしまう。
あの世とか、心底どうでもいいことを考えてしまう。
あの世とかのことを調べている学者もいるが、何様なんだろうか。神様にでもなったつもりか？
この世には、あの世と同じで知らない方がいいこともあるのによ。

あの世は本当にあります！！だからなんだ？
それで犯罪者がいなくなると？
地獄が怖いなー犯罪なんてやめてしまおう、お巡りさーん！！
なんて奴がいるとでも？

『どうでもいいな。それこそね。』

何回も何回も聞いた声
人間とはこんな声が出せただろうか

『どうしたの？こんなところに来て。君は死ななかったはずだけど？』

そいつはログチェアに膝をたててゆらゆらと座っている
隣には、いやに豪奢な一人用のソファがあった

俺は、座らなかった

キ｢殺せ、｣

情けないことに、足が震える
しかし、覚悟は決まっていた
震える足を押さえて、胸を張る

キ｢俺を、殺せ｣

『…』

にこにこと笑ったまま、Aは動かない
俺は、余裕ぶってみせる

キ｢おっと、勘違いすんなよ。俺が死にたいのは別に豚小屋に放り込まれるから、とかじゃねぇ｣

Aの表情は変わらない

キ｢____俺が、最後の一人だからだ。｣

最後の“役”が、犯罪者だったなんて格好がつかないが、

キ｢自分の為に死ぬなんてまっぴらごめん。お前の為に、死んでやる｣

役だった俺は、所詮背景の代わり

キ｢俺の代わりに、行ってこい｣

幕を閉めるのは、俺じゃない

キ｢全員背負って、あいつのこと殴ってこいや｣

気づけばAは、俺の目の前に立っていた

『______ありがとう』

長いまつげに、病的にきめ細かい透明な肌
存在感を発する真っ白な髪の毛、神経の滞る真っ赤な瞳

こいつが俺の、大切な友人

がぶり、と首を噛みつかれる
痛い、痛いが苦しくはない
隣から聞こえる租借音

狐の姿は、どこにも見えない

いい人生でした。ご馳走さま。