疑心、暗鬼を生ず[実況者] (ページ28)

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28,メモページ28

Aside---------

お腹はいたいし、ないはずの車の音は聞こえるし、今私は最悪の体調なんじゃないかな。
でも、だけれど、私は今最高に____

『ご機嫌です』
縄を離すと、どっと重たい音と共に少年が落ちた。
手がしびれたので、手を回しながら辺りを見回す

歓喜の声は、上がらない。
まあ、当たり前か。
犠牲者が０人でこの裁判が終われるはずもないし、ぎすぎすしない、元の村に綺麗さっぱり戻れるはずもない。

だけど、そのなかで嬉しそうに笑っている人が一人いた。
それは、騎士だった。

こ｢おい！よかったじゃねえか！これでもう誰にも殺される心配はなくなった！喜べよ！もう夜に怯えなくていいんだぜ！？｣

あぁ良かった
騎士は満面の笑みを浮かべている。そして私の元へ近づいてきた。

こ｢ありがとうございます！シスター、貴方のおかげでこの村は救われました！｣

少し涙を目にたまらせて、私に握手を求めてくる。しかし、私は拒否をした。

『いえいえ、騎士さんこういうときは、こっちでしょう？』

私が右手をあげると、騎士さんは顔を明るくさせ、自分の右手もあげた
パァンッと小気味のいい音がなる

なぜか、初めてのはずなのにこの動作が懐かしく感じる。
体温のない手、ハイタッチ、腹痛…
頭の中のジグソーパズルがはまってゆく

私はメモ用紙を取り出した
____これは、忘れてはいけないことだ

そんな気がして、私は書きとめてゆく

体の中から痛む腹痛、体温のない手、ハイタッチ、車のブレーキ音、キヨ、こーすけ、レトルト、p-p 、狂喜的な笑い、牛沢、フジ、赤、神

ガリガリガリガリ

こ｢シスター｣

ガリガリ

こ｢シスター？｣

ガリガリ

こ｢シスター！！｣

『っ！』

一気に現実に引き戻される

こ｢どうしたの？大丈夫？｣

『あ、ごめんなさい、大丈夫、です』

こ｢ならいいんだけど…ねぇシスター、俺らこれから打ち上げをするんだ。シスターも来てよ！｣

こーすけさんの足下を、なにかが通る
こーすけさんが、私の肩をぐいっとして、皆の方を向かせた
皆、笑っていた

こ｢だって、シスターは俺らの英雄なんだからさ！｣

私は背中を押されて、歩き出す。
狐は、私を避ける

妙に陽気なこーすけさんに見えぬよう、私はポケットの中の紙に、“狐”と書き込んだ

____びりりと、紙を破る音がどこかで聞こえた