【ky】実況者の憂鬱

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何食わぬ顔でキヨはスマホをいじっている。Aははあとため息をつき彼からスマホを取り上げた。
　
「あのさ、一緒にいるんだから返信するなよ」
　
先程投稿したXに書き込まれたキヨの返信を削除しぽいとスマホを返す。
　
「あー、消しやがった。いいじゃん別に」
　
スマホの画面を見てキヨはあからさまにため息をついた。ちょっと不貞腐れた顔も可愛いと思うあたり自分も彼と同類なのだろうかとAは小さく息を吐いた。
　
「今日はもうお仕事終わりです？」
　
キヨはゆっくりと体を起こしAの手を取る。すらりと長い指に絡められAはぴくりと肩を震わせた。
　
「グッズの告知動画撮ろうかなって思ってたけど」
　
部屋の隅にある記念グッズを見る。キヨは「あー」と不満そうな顔でグッズを手に取った。
　
「俺も一緒にやろっか」
　
「やだ」
　
キヨの問いに反射的に断りひょいとグッズを取り上げる。アイコンのぬいぐるみは思っていたよりも可愛くできており個人的には大満足である。むにむにと遊んでいるとキヨはそのぬいぐるみを取り上げ机の上に置いた。
　
「じゃー明日でいいじゃん。今俺いるんだし」
　
駄々をこねる子供のようにAの背中に頭をぐりぐりと押し付ける。絡め取られた手をゆっくり握り返し「わかったよ」と言えばキヨの顔がぱっと明るくなった。
　
「あのさー、ほんと好き」

何でもないことのようにさらりとキヨは言う。ストレートな愛情表現に慣れていないAはう、と言葉が詰まる。そんなAの様子を彼は楽しそうに見ているのだ。
　
　
「…私もさ、好きだよ」
　
　
キヨの目がぱちくりと動く。想像していなかったのであろう言葉を聞き彼は嬉しそうに、愛おしそうに「うん」と呟く。
彼の胸へと導かれるように背中に腕を回され、Aもまた彼の背中へと腕を回した。
　

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