【御幸一也】「好きな子には意地悪したくなるタイプなの、俺は」 (ページ5)

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あれから一週間が経ち、衝撃のクラス替えによってこさえられた傷も少しずつ癒え始めてきた頃。進級して、教室の場所と下駄箱の位置くらいしか変わったことのない帰宅部の私は、いつものように鞄を引っ提げて教室を出ようとした。その矢先である、「神崎さん、これ御幸くんに渡しておいてくれないかな」と蚊の鳴くような声で頼まれたのは。

「え、何で私？」
「えっと、御幸くん話しかけづらいというか。だから、仲の良い神崎さんにお願いできないかなと思って」

おずおずと申し訳なさそうに差し出された、日直の日誌。そういえば明日は御幸の番だったっけ、と思うよりも先に「仲良くないから」と目の前で謝り倒しているクラスメイトの発言に訂正を入れておいた。

「本当にごめんね、帰るところだったのに」
「いいよ、そういう雰囲気を出してる御幸が悪いから」

それに、こういった頼まれ事は去年から結構あったので慣れている。課題やら伝言やら、それ以外に告白の仲介なんかも。私は何でも屋じゃないんだぞ、と溜息を吐きながら教室を見渡すと、目的の眼鏡の姿はいない。もしかして部活に行ってしまったのではないか。あの野球部のグラウンドに一人で行くのはさすがの私でも不安である。それなら倉持くんにぞっこんな澪も一緒に、と再び見渡すが、「用事がある」と足早に帰って行ったのを思い出し、私は肩を落として仕方なく教室を後にした。

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