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「元気出しなって、露」


友人の槙野澪が、ショックで机に突っ伏している私を励ますように背中を擦ってくれる。そんな彼女の優しさに甘えようとゆっくり顔を上げれば、「ほらお食べ」と口にポッキーを突っ込まれた。 …うまい。


「先生に"御幸を追放してください"って直談判してこようかな」
「いい加減諦めなよ、私はこのクラス好きだよ。楽しそう」
「そうだよね、愛しの倉持くんもいるもんね」
「声がでかいんだわ」


私の口を塞ぐように大量のポッキーを思い切り突っ込んで、聞こえていないかと倉持くんの方へ慌てて目を遣る彼女。つられて私もそちらへ顔を向けると、彼の隣にいた御幸と目が合った。反射的に眉を顰めると、何故か吹き出した彼。眼鏡かち割ってやろうかな。
じと目でばきぼきと豪快な咀嚼音を立てながらポッキーを消化していると、「今日の倉持くんのビジュアル、国宝級なんだけど」とほんのり頬を染めて恍惚としている澪の姿が目の端に映る。そう、彼女は一年の頃から密かに倉持くんへ想いを寄せている。彼は実は元ヤンで、その影響か言動や雰囲気が少し怖い所があるけれど、話してみれば意外と優しくて周りのことをよく見ている人だなと思う。澪曰く『ギャップ萌え』だそうで、そういった所にころっと落ちたらしい。私が御幸におちょくられている時もよく味方になってくれるので、彼の存在はとてもありがたい。だから今年も同じクラスになることができて素直に嬉しいと感じた。
今年もお世話になります、と倉持くんに合掌していると、「もうすぐ始業式だから廊下並べよー」という担任の声が耳に届く。談笑をやめて腰を上げるクラスメイトたちに倣い、私たちも席を立つと、御幸がからかいめいた声音で話しかけてきた。


「神崎、さっき槙野と何話してたの」
「御幸と一緒のクラスで死にそうって話」
「俺は嬉しいけど」
「そりゃそうだろうね、おもちゃがいるんだから」
「本当捻くれてるよな、お前」
「御幸がそうしたんだよ」


責任取れ、と傍にあった耳を引っ張ると「いてて」とわざとらしく声を上げる彼。しかし、どこか嬉しそうなのは何故だろう。もしかしてドMだからだろうか。


「そこ、いちゃいちゃしてんじゃねえぞ」
「はっ倒すよ倉持くん」

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作者名: | 作成日時:2023年6月20日 21時

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