検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:111,434 hit

第53話 ページ4

秀「見えているか?」

今度はゆっくりと首をふる。一時的なものであってほしい。光を失ってほしくなかった。しかし、素人に詳しいことまではわからない。

これはいくらボウヤでも自分でも判断できない。

秀「俺がわかるか?」

しっかりとうなずいたのを確認する。

秀「俺は誰…。」

そこまで言いかけたとき彼女が、一瞬顔を歪め、胸を押さえうずくまった。過呼吸になっている。

秀「深呼吸だ…落ち着け…。」

口に布を当てる。しばらくすると眠りについた。先程の苦しげな表情から一転して、安心しきった顔だった。




目を覚ましたはずのガリアーノは、暗闇のなかだった。懐かしい彼の嬉しげな声が聞こえる。

顔を見たくて彼を探すが、わかるのは光の濃淡だけ。

いくつかの質問に答えたとき、心臓を押さえつけるような痛みが走る。イヤだ。来ないで。彼の前なのに…。

今はもう、前も後ろも上も下もわからなかった。




再びガリアーノが目覚めたときは、さっき以上に不安になった。何があるのか。

秀「大丈夫そうか?」

こんなに不安で心配している自分に驚く。

今度はしっかりと目があった。

秀「見えているのか?」

くすっと笑って、口を開く。でも、何も聞こえない。

そっと耳を寄せるともう一度繰り返してくれた。

「ライ…ありがとう…。」

小さな声だった。ここまで弱っている彼女を久しぶりに見た気がした。

秀「何か食べるものを持ってこよう…。」

後遺症がでなさそうでとりあえずひと安心だ。

部屋をでながら、大分前に作ったお粥を温めて食べさせようかと思った。

自分も食べていないな。あの痛みを堪えるような顔を見たときから、不安で側を離れられなかった。

目を離した隙に過去の人となってしまいそうで。

鍋に火をかけてお粥を温めながら、コナンにメールを送る。今は、誰も来ないでほしかった。少しでも二人で居たかった。

我ながら女々しいとは思っている。

それでも、普段の自分と違うとわかっていても彼女との時間は、大切にしたかった。

どちらともが、いつ命が泡となって消え去ってもおかしくないから。

秀「情けないな…。」

彼女だけは、守りきって見せると断言できない己が。

ボウヤは、あれほどはっきりと言ってのけるというのに。

第54話→←第52話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (198 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
254人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かなと(プロフ) - 気になる終わり方でしたが、ありがとうございました(泣) (2016年6月4日 0時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
ラスティ - 更新待ってます (2016年6月2日 22時) (レス) id: 35a99e4b3a (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 更新頑張ってください!!応援してますから!! (2016年5月28日 20時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 死にたいとか云わないでー!! (2016年5月22日 14時) (レス) id: 181887ceab (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - ラスティさん» ラスティってお酒の名前ですよね!! (2016年5月21日 22時) (レス) id: 181887ceab (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒闇 | 作成日時:2016年4月9日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。