第53話 ページ4
秀「見えているか?」
今度はゆっくりと首をふる。一時的なものであってほしい。光を失ってほしくなかった。しかし、素人に詳しいことまではわからない。
これはいくらボウヤでも自分でも判断できない。
秀「俺がわかるか?」
しっかりとうなずいたのを確認する。
秀「俺は誰…。」
そこまで言いかけたとき彼女が、一瞬顔を歪め、胸を押さえうずくまった。過呼吸になっている。
秀「深呼吸だ…落ち着け…。」
口に布を当てる。しばらくすると眠りについた。先程の苦しげな表情から一転して、安心しきった顔だった。
目を覚ましたはずのガリアーノは、暗闇のなかだった。懐かしい彼の嬉しげな声が聞こえる。
顔を見たくて彼を探すが、わかるのは光の濃淡だけ。
いくつかの質問に答えたとき、心臓を押さえつけるような痛みが走る。イヤだ。来ないで。彼の前なのに…。
今はもう、前も後ろも上も下もわからなかった。
再びガリアーノが目覚めたときは、さっき以上に不安になった。何があるのか。
秀「大丈夫そうか?」
こんなに不安で心配している自分に驚く。
今度はしっかりと目があった。
秀「見えているのか?」
くすっと笑って、口を開く。でも、何も聞こえない。
そっと耳を寄せるともう一度繰り返してくれた。
「ライ…ありがとう…。」
小さな声だった。ここまで弱っている彼女を久しぶりに見た気がした。
秀「何か食べるものを持ってこよう…。」
後遺症がでなさそうでとりあえずひと安心だ。
部屋をでながら、大分前に作ったお粥を温めて食べさせようかと思った。
自分も食べていないな。あの痛みを堪えるような顔を見たときから、不安で側を離れられなかった。
目を離した隙に過去の人となってしまいそうで。
鍋に火をかけてお粥を温めながら、コナンにメールを送る。今は、誰も来ないでほしかった。少しでも二人で居たかった。
我ながら女々しいとは思っている。
それでも、普段の自分と違うとわかっていても彼女との時間は、大切にしたかった。
どちらともが、いつ命が泡となって消え去ってもおかしくないから。
秀「情けないな…。」
彼女だけは、守りきって見せると断言できない己が。
ボウヤは、あれほどはっきりと言ってのけるというのに。
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かなと(プロフ) - 気になる終わり方でしたが、ありがとうございました(泣) (2016年6月4日 0時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
ラスティ - 更新待ってます (2016年6月2日 22時) (レス) id: 35a99e4b3a (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 更新頑張ってください!!応援してますから!! (2016年5月28日 20時) (レス) id: 5c59d46582 (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - 死にたいとか云わないでー!! (2016年5月22日 14時) (レス) id: 181887ceab (このIDを非表示/違反報告)
かなと(プロフ) - ラスティさん» ラスティってお酒の名前ですよね!! (2016年5月21日 22時) (レス) id: 181887ceab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒闇 | 作成日時:2016年4月9日 23時