静寂 second【名探偵コナン】 (ページ22)

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第７１話ページ22

やっとのことで止まった観覧車。

被害は最小に抑えることができた。

たったひとりを救えなかった。自分たちを守って死んでいった。観覧車に押し潰されて。

秀「良くやったな…ボウヤ…。」

こちらの気持ちを解った上での言葉だと瞬時に感じた。でも、救えなかったものの代償は、とてつもなく大きい。

コ「あっ！…ガリアーノ…。」

たった今思い出したもうひとりの存在。

恐らくキュラソーを助けるべくあの場にいたのだ。だったら、観覧車のなかだ。

秀「あいつが…いたのか？」

急いで駆け降りる。

今度こそ救いたくて。

見つけたのは、苦しげに肩で息をしているガリアーノだ。彼女は、何をしているんだと言わんばかりの顔をしていた。

「何しているの…。早く逃げなさい。」

後ろから漂う真っ黒な今宵の黒よりも深いオーラ。見てはいけないとわかっているのに振り返ってしまった。般若がいる。

秀「独りにするなと言ったのは…お前だろう…。」

近づいてきた。何を怒っているのか良くわからないが、自分の台詞が引き金だと云うのはわかった。

「手を貸して…。立てないの…。」

右手をあげ、そう言った。ボウヤの心配そうな顔が見えた。キュラソーの最期を見届けたのだろう。

コ「大丈夫？…怪我しているの？」

かぶりを振ると少し安心したような顔になる。何と単純なのだろう。

「キュラソーは…想いを遂げたのね。」

今度は悲痛そうな顔をする。今日の彼は、何と素直なのだろうか。

コ「助け…られなかった……。」

キュラソーは、唯一ガリアーノのことだけを覚えていたというのに。愉しそうにその事を話す彼女がいたのに。

「彼女は、自分の色を見つけただけよ…。ありがとう…。彼女を綺麗なまま送り出してくれて…。」

赤井に寄りかかりながらやっとのことで立っているように見える。そんな彼女から放たれた言葉たちは、何と哀しげで温もりを感じるのだろう。

赤井といいガリアーノといい、時折見せる不器用な優しさが仇となり、己を苦しめていることに気がついているのだろうか。

自分たちが被るベールを自ら黒く染めていることに。

秀「何が怪我してないだ……。ボウヤよりボロボロじゃないか…。」

赤井が気を利かせたように話を変えた。

ほら、そうやって僕の気をそらそうとして。

でも、それに乗っかってしまう自分がいる。

この大人たちには、いつまでたっても勝てそうもない。