sky100 告白 ページ5
Aside
「っ……はぁ」
ここで、終わりか……。
そう思った途端、頭の中から何かが抜け落ちるような気がした。
「Aちゃん!!」
士郎が私の顔を見ているのがわかる。
ぼやけていく視界の中で、それだけがわかった。
「へへ、頑張ってたんだけどな……ここで終わりみたい」
そうやって笑うと、ある言葉が頭の中に浮かぶ。
……あぁ、今言わなきゃダメなんだ。
忘れていたのかもわからないけど、大切な私の気持ちを。
「……すきだよ、士郎……」
「っ……僕も、Aちゃんが……」
その言葉の先を、聞くことは叶わなかった。
ｰｰｰ
吹雪side
「士郎君!!姉ちゃんは……」
駆け寄ってきた栗太君の顔は、今にも泣き出しそうだった。
「……もう、意識を失った……」
「っ……そんな……!!」
実況も、観客もざわついている。
でもそんなの、僕にとってどうでもよかった。
固く目をつぶったAちゃん。次に目を開けた時には僕たちの事を忘れているんだ。
……そう思うと、悲しくて苦しくてたまらなかった……。
……それから久遠監督により、Aちゃんは病院に運ばれることに。
僕たちは重たい雰囲気が流れるなか宿舎に戻ったのだった……。
……そして、夕食の時間。
いつもよりずっと、食堂は静かだった。
不動君がAちゃんにトマトを押し付けることもない。
綱海君とAちゃんが世間話をしていて、そこに飛鷹君や不動君を巻き込むこともない。
……それだけでこんなに、静かなんだ。
帰りのキャラバンの中で、不動君がこう言っていた。
『Aは、試合中には発作を起こしていた。気力だけで最後まで立ってたんだろうな』
と……。
そこに久遠監督が帰ってくる。
「雪本の意識が戻った」
監督は開口一番にそう告げ、皆が驚いて監督の顔を見る。
「もちろん……記憶は、失っていた。会話や知能には問題はなくサッカーに関してもルールはわかっているようだ。
明日には宿舎に戻れるとの事だ」
……明日には、戻ってくるんだ。
その事は嬉しかったけど……記憶を失ったAちゃんに、どう関わればいいのか想像が出来なかった。
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作者名：ナツ | 作成日時：2018年8月4日 19時
