ラベンダーアイスに囲まれて。 ページ19
〇南side
悪いことしちゃったな。
なんて内心思いながらも無事に孤爪くん用のグラタンを確保できた。手元にはまだ温かみのあるグラタン。パスタとセットで食べることを想定しているから小皿に数口ほどグラタンが乗っているだけだ。
この量なら、食べ切れるだろうか。少し遠くを見つめながら足早に保健室へ向かう。
その途中で、首にかけたタオルで汗を拭いている信介に出くわした。どうやら烏野の主将と話しながらこちらに来ているようだ。
｢！A。大丈夫そうなんか。｣
｢そんな慌ててどうしたんだ？｣
2人が声をかけてくれるがこの温かいグラタンを届ける使命はまだ終わっていない。
少し小走りをしながら『孤爪くんのお昼。
そっちでも熱中症っぽい症状の子がいたら容赦なく保健室に送り込んで欲しい。』
と伝えれば2人ともしっかりした主将だ。｢あぁ。｣｢わかったわ｣と返事を各々返してくれた。
┈┈┈┈┈┈
コンコンコン……
『失礼〜。グラタンだよー…… 』
足で頑張って扉を開ける。行儀悪いとかは今は目を瞑っておいて欲しい。
目に入った光景はゲームを自分にかかっている布団の上に置いて、外をじっと見つめる孤爪くんの姿。隙あらばゲームをしているイメージしか無かった私にとってはとても信じ難い光景だった。
｢…ぁ、南さん。｣
彼もこちらに気がついたらしい。虚ろな目で私を見つめる。
相当、熱にやられたのだろうか。サイドテーブルに持ってきたグラタンとスプーンをコトンと置き彼の方へと歩み寄れば、彼は少しづつ言葉を紡ぎ始めた。
｢……眠い。
暑いけど、お腹減ったし。｣
｢……食べる。｣
支離滅裂な言葉。けれど持ってきたグラタンに目を光らせる彼に『ん、良かった。』と言いながら隣に水のペットボトルを置いた。
カチャッ……カチャッ……
金属と陶器が当たる音が保健室に響いたのを確認して、自分もお昼ご飯を食べる為に食堂へと歩き始めた。
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作者名：びとうぃーん。 x他2人 | 作成日時：2022年10月9日 16時
